静かな部屋の奥に、巻物を抱えて座る人影がある。カーテンの向こう、月の模様と水の気配が気流のように交わり、やがて何も答えない湖へと沈む。知恵の書は閉じられ、そこに刻まれた言葉は誰にも読まれぬまま、時が過ぎていく。女教皇の世界では、沈黙と秘密が重なり合い、語られることのない約束がひとつ、またひとつと積み重なる。ギリシャ神話の神殿で、巫女たちは神託の紙片を静かに箱にしまい、誰にも見せぬまま香の煙を漂わせていた。彼女たちの足もとを流れる川は、答えを運ばず、ただ冷たい鏡のように空を映す。遠い北の土地にも、こうした沈黙があった。霧に包まれる早朝、遺跡の石をひとつずつ撫でて歩く人々は、心にしまった秘密を語ることなく、ただ苔の柔らかな手触りだけを確かめていた。
その色のまとうものは、長い旅の終わりに広がる野原の中、深い落ち葉の下に隠れていた。古い劇場の幕の奥で語られぬ物語が眠るとき、舞台袖にはふかふかとしたビロードの衣が並べられ、どれも一度だけ光を浴びて再び闇に還る。伝承の踊り子が、夜明け前の薄明かりの下、静かにその衣をまとい、静止したまま影のように立つ。イタリアの古い街では、収穫が終わったあとの果樹園に、闇色の果実がひっそり実る。誰にも知られぬまま熟れ、ひとつだけ摘まれてはかすかな香りを残すだけ。
遠い島国の職人は、濃い色の糸を撚って絹を織り、贈り物の箱や手帳の表紙を飾った。春の嵐の夜、古い図書室の片隅では、重たい帳簿の背表紙を指でなぞる人がいる。空が曇り、静かな雨が細く長く降りつづく午後、家の中では窓辺に小さなランプを灯し、古い本のページをそっとめくってゆく。
今日は、帳簿の背をなぞり、古い手帳を引き出しから取り出してみる。糸のほつれを指先で整え、瓶に残った濃色のジャムをひとさじすくう。閉じた窓の外で雨が降るのを静かに聞きながら、書かれていない言葉の気配を感じてみる。
今日のラッキーカラーは、レベッカパープルです。
Lucky Color: RebeccaPurple — #663399静かに思考を巡らせる時、答えはすぐ見つからなくてもよいのです。