二人は並んで立っているが、背中合わせのまま言葉を交わすことなく、互いの影だけが地面に溶け込んでゆく。選択は棚上げされ、迷いが空気のように薄く広がり、やがて心の隙間に静かに沈殿していく。ギリシャの昔話では、恋人たちが川のほとりで出会い、手を取り合うこともなく、ただ流れる水音と風の声に包まれて立ち尽くしていた。決め手が見つからないまま季節がめぐり、彼らの足元には乾いた土と古い樹皮とが静かに折り重なり、苔むした石のそばに落ちた木の実がひとつ、陽だまりのなかに眠っていた。
遠い大地では、広がる平原に点在する家々が素焼きの器とともに暮らしを重ねてきた。古い炉端に積まれた薪は、燃え尽きる前のぬくもりを残し、壁際の長椅子には旅人のコートが掛けられている。窓の外には小雨が降り、土の匂いとわずかな煙が混じる。昔の職人は、土を練り、器を焼き、静かな手つきで淡い染め布を仕立てた。その布は、家族が集う食卓の上にそっと敷かれ、語られぬ気持ちが日々の中に重なっていく。家の片隅には、旅人が持ち帰った貝殻と、子供たちが夏の日に拾った木の実が小さなかごに入れて置かれている。
雲低く垂れこめた午後、風はほとんど止み、外の世界は遠く静けさに包まれる。カーテンの向こうで、濡れた土の香りがふっと入り込み、部屋にいる誰もがそのまま言葉を飲み込む。日常の中では、土の器に果実を盛り、手触りの残る布巾でテーブルを磨いてみる。ただ静かに、窓辺で雨音を聴きながら、古い手紙を読み返すこともできる。今日にできるのは、棚の奥にしまった器をひとつ取り出し、水を満たしてそっと卓上に置くこと。流れる時間のなかで使い古された布を小さく畳み、やわらかな手つきで机の上を拭うこと。そして、雨の香りのする空気を胸いっぱいに吸い込んで、今この瞬間だけを感じること。
今日のラッキーカラーは、ロージーブラウンです。
Lucky Color: RosyBrown — #BC8F8Fためらいの時こそ、静けさの中にあたたかさを見つけてください。