夜明けを拒む影がそこにある。終わりを受け入れず、手放せぬ王冠が重く頭に載る。死神の馬は進みかけて止まり、大地に残る古い足跡を見つめている。すべてが新しく始まるはずの場所に、昨日の名残が鈍く沈む。ペルセポネが地上を拒み、冥府の門の奥にとどまるように、扉は固く閉ざされたまま。陽が昇らぬ夜明け前の寒さが、古いものの影を長く伸ばす。
むかし、古都の大寺院の門前では、使い古された鞍が職人の手で丁寧に磨かれていた。馬を失った騎士の鞍は、次の旅立ちを知らず、物置の片隅で静かに佇む。新しい命が生まれるたびに、そこでは何かが役目を終えて消えていく。だが、あの鞍は捨てられず、長い冬の間、倉に積まれた干し草の上で過ごしている。
彼の地の広い平原では、乾いた大地が雨を呼ぶのをただじっと待つ。風が吹いても、色褪せた馬具とともに夢は眠っている。旅人は沈黙のまま、古い鞍に手を触れ、遠い日の匂いを嗅ぐ。時を超えて残る革の感触は、手放せぬ思いと同じ。カウボーイたちが陽が昇る前に身支度をし、馬に鞍を載せるように、誰もがかつての夢を胸に抱き、朝を待つ。
森の中で暮らす人々も、同じように鞍を大切にした。大麦の畑を耕す農夫は、使い込んだ馬具を小屋に掛け、雨の日には油で磨いた。革のつやは、手間と時間の積み重ね。火を起こし、鍋を吊るすときも、古い革紐で結わえることがあった。北風が強く吹き、土埃が舞うとき、その革の香りは守りのように感じられた。
かつての時代、交易路の宿場町では、旅人が革細工の職人の店を訪れ、靴や鞍の修理を頼んだ。旅を終えて戻る馬の背には、土と汗のしみ込んだ革の温もりがあった。職人の手の跡が刻まれた道具は、長い使い道を超えて家族の記憶となった。重荷を担い、川を渡り、山を越えたあとの安堵の時間に、誰もがその柔らかさに触れた。
今日、何かを終わらせることができない気持ちが残る朝、身近な革小物やベルトにそっと手を添えてみる。古い手帳の表紙をひらき、そこに刻まれた線を見つめる。もし家に馬具がなくても、革の財布や鞄に手入れの油を塗る。鞍のような椅子に腰かけて、深呼吸しながら心の中の「古い冠」を見つめる。部屋の隅にある革製の道具を手に取り、過ぎた日の重みや温かさを思い出す。どれも今日の心をそっと支える小さな儀式。
今日のラッキーカラーは、サドルブラウンです。
Lucky Color: SaddleBrown — #8B4513変わらぬものをそばに置き、静かに新しい朝を待てばよい。