止まりきれない者がいる。けれども、歩みを留めたまま、その意味に顔を背ける者もいる。ある男が、何かに捕らえられて宙に逆さまに吊るされていた。ギリシャ神話のオルフェウスは黄泉の国の入り口で振り返ってはいけない戒めを破り、愛する人を再び失う。北欧の神オーディンは、世界樹ユグドラシルに逆さまに吊るされ、知恵を求めて九日九晩を耐えた。その間、世界は静まり返り、鳥や獣たちは息を潜めて見守った。
しかし、今日のこのカードは逆さの逆、止まり切ることの拒絶、あるいは逆に、動き出すことができない硬直の気配。列車のレールを滑る車輪、仕事場で使い古されたインク壺、遠い島の溶岩に焼けた石、夜の帳に包まれて光を跳ね返す湖面、そして吹きすさぶ嵐が通り過ぎた後にだけ残る焦げ跡。日本の古い寺院で僧が炭を焚き、石庭に影を落とす。エジプトのピラミッドの奥、眠り続ける王の棺は光を拒む壁の中に置かれている。
一方で、ヴィクトリア時代のロンドンを思い出す。霧に包まれた石畳、街燈すら届かない路地。シルクハットと燕尾服の紳士たちが、夜会の帰り道に足早に歩み去る。彼らの足下には、まるで影そのものがうごめいているかのようだ。アフリカの大地、夜になると野生の動物たちが姿を現し、やがてまた闇に溶ける。インドの古い村では、乾いた大地に焼けた壷を置き、夜になるのを待つ。
古代中国では、筆で書をしたためる時、磨られた石の上にわずかな水を垂らし、そこに重い煤を混ぜた。書き手は一文字ごとに心を込め、墨の香りとともに時間が流れてゆく。中世の修道院では、羊皮紙に羽根ペンで記録を残す修道士たちが、薄暗い蝋燭の光の下で仕事を続ける。
現代に戻れば、夜明け前の都市で、信号待ちをする自転車のタイヤにまだ誰も気づかぬうちに露が宿る。冷たいアスファルトの上、雨が上がった後には、空を映す水たまりが目立つ。レコードの溝に針を落とし、ゆっくりとした旋律が流れ出すとき、部屋の隅で古いトランクが静かに佇む。
今日できる小さな動作として、古い万年筆にインクを補充し、静かに文字を書いてみる。夜の静けさの中で、焚き火やキャンドルの炎を眺める。使い古したカップで温かな飲み物を味わう。玄関の靴を丁寧に磨き、足下を確かめてから一歩踏み出す。それぞれに、見えない重さや歴史に触れながら、確かな居場所を感じることができるだろう。
今日のラッキーカラーは、ブラックです。
Lucky Color: Black — #000000静けさと重みの中に、確かな意志をたしかめてください。
闇の奥に、新しい一歩の気配が宿ります。