あわい霧が晴れぬうち、青年は足元を確かめずに崖の端へと進む。彼の背には旅に出る者の小さな袋と、無邪気な犬が跳ねる。彼は風の流れだけを頼りに、地の確かさも見ぬまま次の一歩を宙へ投げる。東洋の古い故事に、誰も火の神の怒りを恐れずに炎の祭壇へ近づいたため、ついに大地が裂けたという話がある。彼の足元もまた、見えぬ罠へ向かって進み出ているように見える。かつて、オリエントの乾いた町並みで、陶工たちは炎の中で粘土を焼き上げた。窯の扉を開けるたび現れるのは、熱に晒されて生まれた堅い焼き物。人の手の跡が残る瓦や壺、道の端に並ぶそれらは、今日も人々の暮らしを支えている。焼き物は雨にも耐え、長きにわたり家々の屋根や土間を守る。大地の奥で採れた土をこね、炎で鍛え、職人の手で積み上げていく。
ある大陸の西の端、日に焼けた煉瓦の町を歩いてみる。そこでは屋根も道も、壁も、土を焼いた同じ色に染まる。古代の神殿の跡にも、遠い植民地時代の駅舎にも、その色の煉瓦が積み重なっている。煉瓦は大地と火の力が結ぶ実り。雨季には湿った風が吹きぬけ、煉瓦の壁はしっとりと鈍く光る。夏には、乾いた南風が煉瓦の表面をさらい、すべてをひとつの温かな色に染めていく。
かりそめの軽さで跳び出した者が、どこかで思いがけず守られているのは、こうした「積み重ね」の力のおかげかもしれない。見えぬ足元を進むとき、長い年月にわたり幾度も積まれ、焼かれ、雨に晒されてきたものに触れてみる。例えば、窓辺に小さな焼き物の鉢を置き、土に触れる。壺や皿ひとつ、掌でその重みを感じてみる。あるいは散歩道で煉瓦の敷石に目を落とし、素足に伝わるぬくもりを確かめる。
道具を使うなら、きょうは心に迷いが生まれたとき、ペン立てにしている古い焼き物のカップを手に取る。乾いた土でできた植木鉢に水を注ぎ、植物の根を包む感触を思う。もし台所に煉瓦敷きの床や鍋敷きがあれば、その上に素朴な食器を並べてみる。踏み出す前に一息、土と火の力を手のひらで感じてみること。それは目の前の足元を、少しだけ確かにしてくれるはずだ。
今日のラッキーカラーは、ファイアブリックです。
Lucky Color: FireBrick — #B22222足元にあるものが、あなたの軽やかさを静かに受け止めてくれますように。
ファイアブリック
THE FOOL · FireBrick
逆位置 · #B22222
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