Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 尼院長

尼院長の紺。中央の鏡に色が映る絵

紺

正位 · #000080

二つの柱のあひだ、重き帳に包まれて、尼院長は秘密を守り候。足元の水のわずかな波紋のみにて切れる静けさの中に坐し、膝の巻物に書かれたるものは読まれぬまま、文は内へ向ひ候。ここの世は耐心あり、意味にて濃く、港が海の口にて待つが如くに候。霧は巻き入り、遠き船の形をやはらげ候。神秘は急ぎては進まず候。帳の後ろに休み、正しき時を待ち候。

古き船の甲板を思ひ描き候へ。材は塩に磨かれ黙し、夕に向かひて最初の灯の灯されるとき、乗組は量りたる歩みにて動き候。海は深く限りなく伸び、船体の下に、広大にて知りがたき文庫が御座候。地平は古き物語を運び候。商船の隊は遠き国より戻り、倉は香料と絹とに満ち、帳面は封ぜられ、各の旅は暗号に候き。水夫は規律と、海は正当の代を取らずしては何も与へぬ、といふ心得とに縛られ候。そこにて、尼院長の牌の上と同じく、規律は直覚と対になり候。知は秘密にて、かつ荷に候。閉ぢたる航海日誌、錠の櫃に御座候。

古き港にて、岸壁の倉は静けき番人と立ち候。重き扉は、品物より多くを隠し候。記録、受取、船長と税吏との私の書付に候。その制服すら、爽やかなる線と磨きたる鈕とにて、広大なる不確かさの上に置かれたる秩序を語り候。これらの場所を通ることは、式と作法との層を動くことにて、問ふ者が尼院長へ近づくが如くに候。招きによってのみにて、力にては決して近づかず候。波止場の天気はしばしば静かにて、空気は霧にて厚く、音と目とを曇らせ候。商ひの急ぎの中にすら、ここは静止の場所にて、時は隅に溜まり、秘密は見られずに集まり候。

家に戻れば、尼院長は実用の物の中に自らの映りを見出すことも候。抽斗に押し込みたる、固く綴ぢたる帳面、その頁は怠る目に閉ぢ候。煮汁が幾時間も静かに煮える深き鍋、蓋は刻の正しきまで決して上げられず候。扉の傍らの釘に掛かる、古き士官の外套の重さ、記憶と雨とにて重く候。いづれにも、教訓は同じに御座候。最も重き真実は、告示されず候。世話と耐心とにて守られ候。

今日、人は私の思ひを日記に錠し、読まるる正しき刻まで待つことも候。ゆっくりと何かを煮、覗くことを拒み、沈黙の中に味の深まるに任せることも候。港、あるいはいかなる静けき水の傍らを歩くことも、思ひの定まり、秘密の形を見付ける余地を与へ候。あるいはただ、机あるいは棚を整へ、各の物を順序に置き、何が来たるとも、私の均衡と備えとを保つことも候。

今日の色は紺に御座候。
Lucky Color: Navy — #000080動かぬ水の秘密は、自らの時を待ち候。

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