Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 尼院長

尼院長の銀。中央の鏡に色が映る絵

銀

正位 · #C0C0C0

尼院長の静けき聖所にて、二つの柱は離れ立ち、そのあひだの静けさを保ち候。帳はかかり、糸は固く織られ、見ゆるものと、ただ感ずるものとを分かち候。膝の上の閉ぢたる巻物は黙し、秘密の文は正しき刻を待ち候。足元の動かぬ水は、上なる月を映し、面の下に横たはるものの鏡に御座候。この牌は、知らざることの内に隠れたる知の約にて、帳の後ろの室に囲はれたる知恵に御座候。

歴史にも、帳は御座候。安那托利亜の川の岸にて、商人はかつて、弦月の女神阿爾忒彌斯の印を打たれたる棒と貨幣とを運び候き。それらは単なるしるしには御座なく、信頼と守護との印にて、紛はすことの能はぬ静けき光のゆゑに尊ばれ候き。後に、中世の僧院の高き倉にて、僧は最も貴き写本を櫃に納め、錠と蝶番とは、町の丁寧なる鍛冶が灯火の光にて夜遅くまで作り候き。かかる櫃は文庫の心に立ち、癒やしの草と忘れられたる祈とを囁く文を抱き、秘密は縛られ守られ、耐心ある読者を待ち候き。

地理も、自らの静けさを貸し候。冬の嵐の後の稀なる朝、土地は霜の一枚の下に眠り、枝も屋根も、冷たく清き細き縁取りにて描かれ候。早き旅人は、足元の道の砕くる音を知り、息の曇りて消ゆるやうを知り候。ときに空自らが下り、霧が野に定まり、音をすべて包み、遠き鳥の叫びのみを許し候。遥か北にて、川は魚を流し、その鱗は石のあひだを走るとき煌めき、動きは同じ一瞬に明かし、かつ隠し候。古き安第斯にて、打ち延ばしたるしるしの列は、かつて旅人の道を印し、高き峠を黙して導き候き。

家の内にて、記憶は手より手へ渡る物に残り候。厨の抽斗の細き匙は、かつて洗礼の贈物に候き。床の下の錠の箱には、祖母が紐にて結びし文を納め候き。燭台の一組は、省みあるいは祈の夜のために出され候。これらの物は静けき客にて、代々のあひだに続きを供し候。寒き夕べ、卓へ運ばれたる茶瓶は灯の下に輝き、湯気は上へ巻かれ候。言の葉の発せられる前の、あの静けさに御座候。古き机の隠れ抽斗は、胸飾、貨幣、あるいは折りたる書付を隠すことも候。その物語は、正しき見付くる者を待ち候。

炉端にて語られる物語にて、尼院長は柔らかく歩み候。水銀の鉢を運び、鏡のやうにて捉えがたく、夢見る者を眠りの縁へ導き候。あるいは黎明に岸を歩き、退く潮の残したる鉱の筋を探し、足跡は砂に模様を押し候。耐心の値、謀を守ることの値、答へを帳の後ろに、刻の熟するまで残すことの値を知り候。

今日、貴殿、日ごとの周囲に隠れしものを見付けることも候。抽斗の奥に休む、忘れられたる記念の品、あるいは瓶の底の古き貨幣に候。家の燭台を磨き、あるいは手書きの文に指を走らせ候へ。古き瓶にて茶を立て、静けき朝に湯気を立たせ、あるいは黎明に外へ出て、地に定まる沈黙を聴き候へ。面の下に守られたる約に御座候。

今日の色は銀に御座候。
Lucky Color: Silver — #C0C0C0語られぬものに、耳を傾け候。

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