Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 皇帝

皇帝の鉄青。中央の鏡に色が映る絵

鉄青

正位 · #4682B4

皇帝は石の座に坐し、嵐にも移ろふ季節にも動かず、その輪郭は谷と峰との鋭き縁と同じく定かにて候。後ろには山の立ち上り、冷たく古く、稜は法の確かさにて地平を切り候。山の空気にて、音は一つ一つより遠くまで届き候。山羊の鈴、遠き村よりの鍛冶の鎚の音、習ひと掟とによりて保たるる物事の絶えぬ秩序に御座候。この景色の中にて、皇帝は気紛れにては治めず候。待ち、風の雪を形づくる様、道の晴れ居る様を見候。道の晴れ居るは、常に誰かが石を掻き、掃き、繕ふゆゑに候。

下なる谷にて、垣は畑と牧場とを区切り候。麦と灌木とのあひだ、草地とその向ふの野とのあひだに境あり候。村人は鉄と石とにて築き、道具は山の鍛冶にて鍛はれ候。鎚の頭、鋤の柄、門の枠、いづれも朝の空気にて触れれば冷たく候。夜明けに、鍛冶の上の空は金属の艶を帯び、昼と夜とのあひだに捉へられ、いづれにも遂に屈せず候。鍛冶は鉄の一筋を炭より上げ、鈍き光沢まで冷ましてより、用あるものに形づくり候。刃、蹄鉄、幾代の扉を通じて軋む蝶番に御座候。

秩序は道具の中のみには御座なく、道具の用ひらるる仕方の中に候。羊飼ひは起きて、夜明けごとに同じ仕方にて群れを数へ候。麺麭屋は粉を量り、祖母の用ひし仕事卓の上にて生地を捏ね、木の木目は数十年の手によりて磨かれ候。商人は帳面を開き、定規の確き導きにて線と数とを引き候。行ひの一つ一つは境、今日が昨日と大方同じやうに進むとの約束にて、陳腐のゆゑには御座なく、耐へるものへの信頼のゆゑに候。天候すらこの日課を敬ひ候。風の山より吹き下ろすとき、寒さをもたらし、雨戸を閉じ、火を灯し、隣人と閾にて報せを交はす時刻の合図と成り候。

鋼と石とは皇帝の座のみには御座なく、日々の生の模様に候。古き都にて、都の門に響く鎧の音は、番の始まりと終わりとを印し候き。川岸に沿ひて、鉄の格子にて築きし橋は春の洪水に抗して確かにて、旅と商ひとを絶えず続けさせ候。港にて、船の胴は鉄板と鋲とにて、潮と命令とを待ち、表面は毎朝塩の霧にて曇り候。はるかに内陸にて、鉄道の軌条は遠き町を結び、金属の一筋一筋は丁寧なる手によりて敷かれ候。永らふるやうに作られしものは、力のみにては永らはず、これを保つ規律と儀式とによりて永らひ候。

今日、秩序は小さき行ひより始まり候。用の後に道具を分け、門の蝶番を締め、あるいは測り難き時刻を枠取る日程を起草することに候。貴殿は罫の引きし帳面に計画を書き、あるいは馴染みの境、庭の壁、垣、畑の縁を歩みて、世話すべき自らのものを印し候。定まりし手順、貴殿の場所の伝統が、貴殿に確かさを与へ候。皇帝の教ふるは、道の保たるるは偶然にては御座なく、日ごとにこれを世話する手と習ひとにて候、といふことに御座候。

今日の色は鉄青に御座候。
Lucky Color: SteelBlue — #4682B4貴殿の構造は慰めと成り、日課は力と成り候。

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