皇帝は石の座に坐し候。その座は、権威の重みを知りたる手の形づくりしところに御座候。背は真っ直ぐにて、臂は広く、線の一つ一つは石切場の記憶と、石工の槌の規律と、石灰と砂とを形に押し固めし忍耐とを印し候。坐すところの下には、今なほ山の脈の走り候。座は、幾世紀の定まりし土より力を引き候。すべての秩序は境より始まり、すべての境は、さ迷ひに屈せざる地の上に引かれ候。
足もとの都にて、壁と門の課す秩序は、炉の心に響き候。家ごとに窯ありて、日ごとに火を守り、粘土を煉瓦に形づくり、列にて焼きて硬くし候。この煉瓦は路地の上の拱を築き、評定の間への段を築き、夜明けに麺麭を焼く窯を築き候。その重みは慰めにて、その模様は、一つ一つを据ゑて見守る限り何事も揺るがぬとの約束に御座候。年を重ねて都は外へ広がり、新しき区画はいづれもこの煉瓦を敷くことにて印され候。その在ることは、新しき秩序の到りしこと、野の荒さがまた一季押し留められしことの知らせに御座候。
真昼の熱にて、建物の壁は日を吸ひ、黄昏までこれを保ち候。皇帝の座の前の広場は同じものにて敷かれ、石は幾代の足にて滑らかに候。角々にて、路の商人は古き煉瓦積の中へ鉄の竈を嵌め、犁と蝶番のための金属を鍛ふ仮の鍛冶を築き候。焼き物の香は、鉄と灰の鋭き匂ひと混じり候。時に雨の後、煉瓦は午後に湯気を立て、嵐の記憶を空気へ返し候。表面は滑れども、そこを歩む者の下にてなほ確かにて候。
都の外にて、山々は並びて立ち、自ら風に削られし壁に御座候。羊飼ひは群れを狭き峠へ導き、畑の尽きて野の始まる境を印し候。この高きところにて、境の石は都の煉瓦と同じ仕方にて据ゑられ、誰かがこの地を領せしこと、最も薄き空気の中にても線を引きて守り得ることを示し候。山の火を囲みて語らるるは、同じ煉瓦にて大いなる砦を築きし王の物語に御座候。その栄えと没落は、秩序の手順をいかに良く保ちしかによりて定まり候き。
内にて、宮の厨には、馴染みの煉瓦にて内を張りし丸き窯の中にて麺麭の膨らみ候。絶えぬ温みにて息づく竈の上には、鍋の煮え候。皇帝の衣は煉瓦に似たる糸にて縁取られ、その模様は位の知らせ、その手触りは、日々の習ひより良き治を織り出すに要りし忍耐と統制の記憶に御座候。夕に、日の山の後ろに沈むとき、最後の光は都の瓦屋根の輪郭を捉へ候。一つ一つは手にて敷かれ、一つ一つは、秩序の千の命を覆ひ得る証に御座候。
今日、人は小さき煉瓦を机に置き、始めしことを終はる覚えとなし候。麺麭を作る定まりし手順に従ひ、捏ねて形を与へ、しかる後に生地を窯へ入れ候。良く築きし炉に火を灯し、あるいは書を棚の上に整へたる列にて並べれば、固くして支ふる秩序を招き候。これらのすべてにて、絶えず、実用にて、境ある手順は、前なる道を守り候。
今日の色は火赤に御座候。
Lucky Color: FireBrick — #B22222秩序は、手の築くものによりて保たれ候。