男は生きたる樹より、片足にて吊られ候。一方の足は曲がり、もう一方は伸び、腕は背にあり、顔の表情は穏やかに候。淡き光の輪が頭を囲み候。世は転じ候へども、男は抗はず候。周りの空気には、夏の嵐の前の沈黙、遠き海より雨の来たらむとするときの沈黙が御座候。古き船人はかつて、かかる雨の約束へ向けて航海し、地中海の上にそれを見守り候き。地平と空は溶け合ひ、その色は水色に御座候。空気は微かに塩と、来たる爽やかさとを味はひ候。彼らは帆を下ろして漂ひ、変はりが届くを待ち候き。すべての動きの再び始まる前の、静けさの瞬間に候。
羅馬の庭にて、静かなる池は空を映し、柱と百合の広き葉に囲まれ候き。この水の傍らに止まりし人は、映る表面にて世の上下の入れ替はりたるを見候き。時そのものがしばし緩むやうに候き。日の熱は休らひ候き。池は雨水に養はれ、時に岸より押し寄せる嵐を盆地に集め、時に遠き泉より手にて汲まれ候き。子はここに玩具の舟を浮かべ、漂ふを見、優しき円を描く中に忍耐を学び候き。池は思ひを巡らす場所にて、忙しき家と開きし野のあひだに保たれ候。何も起こらず候へども、表面の下に何か大切なるものが動き候き。
遠く安第斯にて、雲そのものを集むるほど高き湖が御座候。空気は薄く涼しく、霧は予告なく水の上を転がり候。土地の人は語り候。神々がかつてこれらの水を歩き、消えざる波紋を残し候き、と。表面に動かず立つといふ、休らひの行ひが、湖を永遠に変へしやうに候。漁る人は岸にて正しき条件を待ち、水と風が均衡を見出し、網を投げ得る瞬間を待ち候。ある日、表面はあまりに完全に澄み、空の円蓋が下なる世を抱くを貴殿は見ると言はれ候。
遠き雨季にて、村人は古き土の壺に雨を集め、洗ひ、祝福、あるいは醸しのために貯へ候。壺の満つるとき、その涼しき表面は湿りたる空気の中に汗をかき候。季節の最初の降雨を待つ行ひは、年ごとの儀式の一部に候。この水は貴く、新しき植ゑと新しき生とをもたらし候。始まりを印すために手へ注がれ、あるいは成長を促すために家の植物の根へ注がれ候。この忍耐には敬意が御座候。変はりの遅き到来への、一種の委ねに御座候。
家にて、誰かは蛇口より硝子の水注を満たし、卓の上に置き候。休らひて一瞬を分かつ招きに候。水注は重く、側面に露は成り、注ぐ行ひは緩く念入りに候。厨にて、海綿は洗ふ用意にて坐し、流しの水を含み、触れれば柔らかく候。これらの小さき道具は、水を抱き、また放つことで働き、待ちて後に動くことで、雨と湖と海のより大きなる巡りに響き候。
今日、貴殿は瞑想のしばしのために新しき水の鉢を窓へ置き、あるいは植物へ水をやる前に盆地へ手を通し候へ。公共の泉の傍らに休らひ、飛沫の沈黙を聞き候へ。夕に、澄みたる硝子より緩く心を込めて飲むことは、新しき動きの前の静けさの価を貴殿が省みる助けと成り候。
今日の色は水色に御座候。
Lucky Color: Aqua — #00FFFFしばしの待ちは雨を呼び、静けさの中より新しき見方は現れ候。