Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 恋人

恋人の薄桜。中央の鏡に色が映る絵

薄桜

正位 · #FFB6C1

空気の静かにやさしき庭にて、二人の姿は道の縁に立ち候。足元の土は、早く咲く牡丹の花弁にて柔らかく候。これは決の前の時に御座候。世界が自らを集め、静かに息を止むる時に御座候。ここの木は、林檎か桜に候へども、花を繊細なる招きの如く散らし、敷居を印す花にて地を覆ひ候。選択は強いられず、急がれず候。明けの光に、近くの鳩の胸の淡き光を受けつつ、開けたる場にてなされ候。縁は、最初の庭と同じく古く候。その時、各自が相手を見て、今一度選び候。道は分かれ、花の枝の下にて輪を描きて再び合ひ候。

かかる庭のまはりに、物語は集まり候。希臘の神話は、阿弗羅狄忒の聖なる森を語り候。恋人は扁桃と海棠の花弁の下にて誓を交はし、美しさに根ざす恋は季節に耐ふると信じ候き。東にては、桜の果樹園は約の場に御座候。花の雨の短き日に、新しき結びは祝福され候。今も、世界の静かなる隅にて、園丁は砂糖を溶かせる薔薇水を古き磁器の鉢に満たし、献身の甘さを家の内へ運ばむと望み候。選ぶこと、与へること、受くることは、これらの儀式を貫き候。羊毛や亜麻に掛りたる花弁の如く、軽く、まことに御座候。

厨も、自らのやさしき思ひ出を持ち候。春の朝、人は葡萄柚の一房を切り、蜜を塗れる麺麭の傍らに置くもよく候。野薔薇の模様ある布巾を茶器の傍らに折り、卓を庭の望の小さき鏡となすもよく候。地中海に沿ふ古き町にて、麺麭屋の窓は、結晶せし薔薇の花弁をまぶしたる軽き菓子を見せ候。記念の日、あるいは和解を印すため、家へ持ち帰らるる菓子に御座候。ここの縁は、世話の中に御座候。生地を丁寧に捏ねること、贈り物を包むこと、蜜蜂の来たる庭の縁に、一本多く木を植うることを覚ゆることに候。

世界の天候も、この柔らかさを知り候。六月の初め、霧の夜の後、空の晴れ、空気も石段も低き庭垣も、最も淡き花の色にて撫でらるる朝が御座候。日は新しく、易しく感じ候。羅亜爾の谷の農夫は、かかるやさしき暁は良き収穫を約すと言ひ候。やさしさにて始めしものは耐ふると候。見知らぬ町にて目覚めたる旅の人は、開きたる窓へ引かれ、帳の揺るるを見候。選ばれしばかりの、まだ始まれるばかりのものの約を見候。

この運を近くに引かむと望む者には、単純なる続きが御座候。薔薇の花弁を温き水に浸し、大切なる話の前に手を濯ぐことに候。熟れたる苺の鉢を玄関に置き、入る者へ甘さを供ふることに候。新しき牡丹の花を枕の下に圧し、望ある夢を招くことに候。林檎の花の模様ある襟巻にて文を包み、印を待つ友へ送ることに候。

今日の色は薄桜に御座候。
Lucky Color: LightPink — #FFB6C1やさしき始まりは、守られたる約と同じく力強く候。

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