Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 恋人

恋人の桜。中央の鏡に色が映る絵

桜

正位 · #FFC0CB

手入れの行き届きたる庭に、二人の姿が立ち候。頭上にて鳥は歌ひ、葉のやさしく動くほか、空気は静かにて御座候。足元の土は柔らかく、午後の日の温みは肩の上に伏し候。ここにて選ぶことは、急ぐ仕草には御座なく候。共に先へ伸びる道へ、最初の石を置くことに御座候。二人のあひだは信頼にて満ち、木々さへ近づきて、その決に耳を澄まし候。

二人の歩む庭は古く、心を込めて耕され候き。繊細なる花の群れが御座候。花弁は、遠き岸にて拾はれたる法螺貝の殻と同じ色に開き候。歴史にて、かかる花は繊細にして香高く、夜明け前に摘まれ、新しき恋人の花環に圧され、あるいは婚の道へ散らされ候き。神話にては、女神がこの花の枝を、自らを選ぶ者へ渡し候き。かかる単純なるものを贈ることは、戻りの約に御座候。運命の静かなる絡みに御座候。

別に、ある果樹園の実は、甘さのみならず、貝の内側の如く柔らかき皮のゆゑに貴ばれ候。安那托利亜の市より極東の市まで、その実は貴ばれ候き。かつて商人は島より島へ船を出し、傍らにこの実の籠を置き候き。一つ一つは、待つ心への印に御座候き。祭の日には、これらの宝は切られ、繊細なる皿に並べられ、善意、縁、あるいは大胆に新しきことの始まりの印として、手より手へ供され候き。

小さき蛾の繭より引かれし糸は、代々の手にて布に紡がれ候。この布にて仕立てたる衣は、春の宴の舞人のまはりに渦巻き、野生の薔薇の茂みに抱かれし村の婚の列の肩を覆ひ候き。触れは常にやさしく候。最も柔らかきものは、愛でらるるとき最も長く残る、との思ひ出に御座候。別の時代には、仕立屋はこの布より細き綬を切り、辻の枝へ結び、あるいは誓を立てむとする者の髪へ通し候き。

高き山にて、日のまさに明けむとするとき、空は時に、咲く椿の花弁に見ゆる色を帯び候。晴れと、やさしく温みの約に御座候。羊飼は群れを見つつ足を止め、光の移ろひを見て、先の日のやさしきを知り候き。

縁を始める選択は、内密のみの行ひには御座なく候。育て、作り、分かつものの中に織り込まれ候。今日、貴殿は庭の花を卓の上に置くもよく候。心を掛くる人へ、小さき実を渡すもよく候。忘れられたる糸巻の綬を手首に結ぶもよく候。朝のひととき、空の移ろふ顔を見て、その静けさに次の一歩を任すもよく候。それぞれの仕草は、他の人のみならず、結ぶといふ古き物語へ、貴殿を静かに近づけ候。

今日の色は桜に御座候。
Lucky Color: Pink — #FFC0CB今日の小さき贈り物は、貴殿の手にて咲き候。

恋人へ戻る