Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 正義

正義の鼠。中央の鏡に色が映る絵

鼠

逆位 · #808080

姿は穹窿の広間に立ち、目隠しは付けられ、剣は下ろされ、秤は不均に候。一つの皿は羽を保ち、もう一つは空のままに候。この所の静けさは敬の静けさには御座なく、なされず残されしものの静けさに候。空気に懸る問、言はれぬ判決に候。腰掛は空に候。代言の鞄、忘れられ、卓に寄り候。大理石の床にて、拭きの手桶は、掃除の者の立ち止まりし所に立ち候。おそらく呼ばれて去り、労を半ば終へたるままに候。正義の仕掛けは在り、損なはれず候へども、その目的は円を描き、意味を与ふる者の要る重みを欠き候。広間の色は鼠に御座候。

黎明は工業の街区の上に這ひ、倉庫と住居の塊の輪郭は、持続する霧雨にてぼかされ候。煙は遠き煙突より昇り、湿りし空気に捉へられ、散るよりは沈み候。街灯は揺れ、日出の後も長く点り、輝きは朝の霧に吸はれ候。路地にて、傷みたる自転車は鉄の柵に寄り、車輪は水溜にて跳ねられ候。雨樋は昨日の塵を流し、格子へ向け、緩く渦巻く渦に集むる所へ洗ひ候。

世界の古き都を横切り、かかる天候は生の歩みを摺り足にまで落とし候。店の者は日除を引き、品を庇ひ、商人は戸口に滞り、金属の欄と窓縁に玉と成る滴を見候。傘、過ぐる者に忘れられ、焼場の玄関に待ち候。内にて、麺麭は棚の上に冷え、皮は触れれば柔らかく候。焼師は湿りに対して上衣の鈕を留め、竈を調べ、次いで階へ出て、曇りの割れを空に見候。

田舎にて、農人は群の庇ひを整へ、霧が生垣に沿ひて這ひ、畑を静けさにて覆ふなかに候。石垣、古く風化し、地を縫ひ、牧を路より分け候。小屋の戸の近き、如露は平らなる石の上に坐り、昨夜の雨の滴がなほ面に附着し候。室内、羊毛の掛物は椅子の上に掛けられ、半ば読まれし物語が席に候。火は点されず候。日は冷たく候へども寒くはなく、空気は静かなる待ちの力にて鳴り候。

歴史はかかる天候にて書かれ候。古き法廷にて、書記は、証人が霧に迷ひしか、判者の車が泥に嵌まりしかの時、遅れを記し候き。都はかかる間の周りに育ち、これを用ひることを学び候き。靴師、一日の陰りにて緩み、長靴の革を伸ばし、慎み深く忍耐に候。店の者は棚を並べ直し、罐を高さと札にて揃へ、秩序に小さき慰めを見出し候。家にて、業はその拍子のゆゑに選ばれ候。錆を遠ざくるために鋤の柄を磨き、運河に沿ふ次の歩みのために外套を繕ひ、あるいは返信なきやもしれぬ者へ手紙を書くことに候。

今日、誰かは拭きの手桶を清め、明日の労のために備え候。あるいは焼場より傘を家へ持ち帰り、戸の傍に置き候。隣人へ分つために麺麭を切り候。あるいは、もう一つのより静かなる時に始めし物語の頁を終へ候。祝はれぬこの行は、一日が自らの均衡へ沈むことを許し候。

今日の色は鼠に御座候。
Lucky Color: Gray — #808080待ちは世話にて満たされ、間にても何かは中心へ戻り候。

正義へ戻る