節制の牌にて、衣をまとひたる人が、流るる水と固き土とのあひだに、身構へて立ち候。一つの杯はもう一つの杯へ注ぎ、急ぎも無駄も避くる、量りたる動きに御座候。下の水溜りは、空と、その上の定まりたる手との両方を映し、器と器とのあひだを水の忍耐強く過ぐる舞台に御座候。水溜りの先にて、迷ふ道は優しき尾根を上り、動きと静かなる進みとを示し候。始まりと終はりとの隔たりは、風景の静けさにて和らぎ候。
数世紀前、水夫は、川の海と交はる岸にて見出ださるる、ある石を貴び候き。これらの石は、安き港の記憶を運ぶと言はれ候き。滑らかなる潮、定まりたる風、夜明けに瞥見する海水の、稀にして透きたる澄みに御座候。水夫はかかる石を上着の裏へ縫ひ込み、気性を涼しく、航海を真に保つと頼み候き。甲板の下にて争ひの起きたるとき、船長は一つを掌へ押し、最も荒れたる水も、時を与へれば静まると、思ひ出させ候き。
さらに内陸にて、職人と商人とは、同じ静けさを技に映すことを学び候き。硝子吹きは、融けたる砂に息を吹き込み、鉢と花瓶とに、潮溜りの静かなる輝きを保たせ候き。これらの器は、美しきのみには御座なく、用にも立ち候き。台所の卓にて、春の最初の豌豆を抱き候。莢は庭より来て張りて候。あるいは夕べの茶のための、一握りの薄荷を抱き候。かかる鉢へ水の注がるるたびに、その行ひは声なき祈りを運び候き。注意深く、心を配り、自らの世話へ与へられたるものに感謝し候。
草木の世界にも、似たる存在が現はれ候。穏かなる海岸と、高き石の尾根とに、多肉の草が御座候。葉は雨を集め保ち、正午の熱に対して涼しさを蓄へ候。庭を守る人は、これらの生き残るものを尊び、水を惜しみて与へ、葉に節度の教へを学ばせ候。多すぎず、少なすぎず、ちょうど足り候。夏の驟雨の後、蜂鳥が葉の窪みより吸ひて停まり、のち矢の如く去り、草を乱さず、均衡は戻り候。
天候もまた、配合の技を習ひ候。ある朝、優しき雨の直後、世界は柔らかく清き霧に包まれ候。鋭き縁をぼかし、道と庭との微かなる線を引き出し候。この時、外へ出て、亜麻を通して新たに漉されたる如く、空気を吸ふべきに御座候。一日は急ぎなく始まり、歩みの一つ一つは意図あり、息の一つ一つは、過去と未来とを和解させる静かなる仕事の一部に御座候。杯より杯へ過ぐる水の如く、何も後に残さず候。
今日、貴殿は海に磨かれたる石を懐に入れ、その重さにて思ひを定め候。硝子の鉢へ新鮮なる水を注ぎ、日光の面に遊ぶさまを見て、一日の仕事の前に、しばし映りを休らひ候。旱を好む草の世話をし、真に要るだけの水を与へ、その遅くして声なき育ちを頼み候。あるいは雨の後、当てなく歩き、霧に歩調を導かせ、道は忍耐にて形づくられ候。
今日の色は中海緑に御座候。
Lucky Color: MediumAquaMarine — #66CDAA小さき身振りは調和の仕事を運び、最も優しき儀式も一日を移し候。