Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 吊られ人

吊られ人の森緑。中央の鏡に色が映る絵

森緑

正位 · #228B22

男は生きたる樹の枝に片足を結ばれ、頭を下へ向けて吊られ候。根は深く、枝は空へ伸び候。周りの世は静まり、息を潜め候。その樹は古く枯れしものには御座なく、なほ伸びて樹液を脈打たせ、針葉と葉は頭上に厚く候。静けさの中、小さき風は樹脂と土と濡れし樹皮の香りを運び候。時は止まり候には御座なく、緩み候。頭を囲む光輪は、別種の気づきを示し候。森は黙して立ち会ひ、男は常の見方を手放して、別の見方へ委ね候。

古き物語にて、森は休らひと試練の場に御座候。道は失はれ、樹々は迫り候へども、沈黙の中に何かは変はり候。上なる枝は聖堂を成し、柱はいかなる建物よりも高く昇り、床は苔と松の針にて柔らかく候。古き林の心にて、旅人は聞き入らむとて立ち止まり、世の向きを入れ替ふるを許さずば来らざる答へを待ち候き。北方の地は、かかる森にて境を印し候。暁には霧は幹へ纏ひ候。世は、これを写す言葉よりも古く感じられ候。

この静けさを抱くは、野のみには御座なく候。厨にて、まな板は枝より摘みたる葉にて覆はれ候。空気は蒔蘿、香芹、あるいは龍蒿の香りに満ち、味は舌の上にて鋭く涼しく候。汁は静かに煮え、厨人は柄杓を構へ、蒸気の昇りて渦巻くを任せ、一握りの葉を加ふる正しき時を待ち候。この家の休らひにて、世は静まり候。手は木の卓へ休み、指は木目を辿り、心は庭または市より食物を調ふる儀式にて静まり候。

他所にて、北方の樵は深き林より材を切り、小屋の傍らへ整へて積み候。新しき丸太より滲む樹脂は粘り、手放す直前のやうに固く抱き候。日の沈むにつれ、森は息を吐き、働き人は斧と鋸を置きて止まり候。仕事は中断し、しばし松の下の沈黙は満ち候。

雨はかかる森を過ぎ、柔らかき帳の如く降り候。音は鈍り、針葉と葉の上に落ち候。歩き人は枝の下に庇ひを求め、雨衣は水の粒にて滑り、靴は泥の中にて冷え候。時に沈黙の中、彼らは樹冠を見上げ、見方の向きを入れ替へ、幾千の震へたる滴を通して折れ曲がりて見ゆる世を見候。この短き静けさにて、進むか待つかの決断は明らかと成り候。

今日、樹の下に立ちて風を肌に遊ばせ、あるいは新しき香草の一枝を鼻へ当てて吸ひ入るれば、この森緑の気に触れ候。実なる森にも、思ひ描く森にも、休らひは心の向きを移し候。庭の葉を一握りにて食事を調ふることは、忍耐を招き候。古き木の卓の年輪を静かに辿るときさへ、森の贈り物と静けさの知恵は、心へ落ち着き候。

今日の色は森緑に御座候。
Lucky Color: ForestGreen — #228B22静けさは新しき見方をもたらし、沈黙はすべてを変へ候。

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