男は生きたる樹より吊られ、片足は結ばれ候へども腕は緩く、頭はこの世ならぬ光に囲まれ候。憂ひなき眼差しは、静けさと、思ひがけざる角度より見たる世の中に啓示を見出し候。樹は深き根と広がる枝を持ち候へども、葉はさらさらと鳴らず候。空気は待ち受け、生きる急ぎより取り出したる、聞くための瞬間に候。樹の頂の上には円蓋が広がり候。世代が眺めて来たりし果てのなき穹窿にて、時に空しく、時に漂ふ帳と、遠く彷徨ふ鳥とに満ち候。雲は遅き行列にて動き、枝は吊られたる人を抱き、男は習慣に隠されしものを見候。
幾世紀を通じ、人は頭上の擾されざる広がりにて時を量り候き。古き安那托利亜にて、牧人は石の丘の斜面に休らひ、群れは怠りなく草を食み、渡り行く鶴は遅き弧を描き候き。希臘の哲人は石の床に臥し、日が広く澄みて上に伸びるあひだ、硬き問ひを返し候き。高き希馬拉雅にて、番紅花の衣の僧は掌を合はせ、読経より上を見候き。風は尾根を掃きつつ薄く鋭く、鳶の遠き声を伴ひ候き。それぞれの地にて、開きし空の下の独りなる人は、動くことをやめて新しきものを見出し候き。地の天井が遮られず、心の忍耐あるときにのみ来る知恵に候。
同じ空青の色合ひは、古き呪にも、家の職にも現れ候き。威尼斯にて、硝子職人はかつて天の澄みを高杯と珠に閉じ込めむと求め候き。遠き港の働き人は、帰り来る船を地平に探し、休まざる海と会ふ揺らめく弧へ目を慣らし候き。農家の卓にて、簡き陶の鉢は水を湛へ、頭上の朝の一片を映し、しばし艱苦と塵は忘れられ候き。回廊に保存されし絵にて、上なる世の一劃は平和を入れ、聖者と罪人とをともに照らし候き。天候がこの顔を着るとき、旅は始まられ、野は播かれ候き。祭、巡礼、市の日を印し候き。世の転ずるを見守り、その下に休らひし者は荷を軽くし、心は静けさと高き柔らかき光とにて並べ替へられ候き。
今日、貴殿は澄みたる水の鉢を窓の近くへ置き、眼差しの漂ひ入りて落ち着くを招き候へ。屋根の上、あるいは野など、開きし空の下に休らひ、眼差しを上へ向けて静かなる息を五つし候へ。過ぐる雲、あるいは燕の道を辿り、動きの緩く念入りなるところへ心を休ませ候へ。清き空気と遠さを思ひ出だす亜麻の一反、あるいは愛しき古き写真を持ち候ならば、通常は急ぎて過ぐる時刻に目に入る場所へ置き候へ。それぞれの小さき行ひは、急ぎの向きを転じ、ただ立ちて眼差しを向け、しばし見方の向きを入れ替ふる中に啓示を見出す道に候。
今日の色は空青に御座候。
Lucky Color: SkyBlue — #87CEEB澄みは貴殿の伴となり、静けさはすべてを変へ候。