Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 隠者

隠者の石鼠。中央の鏡に色が映る絵

石鼠

逆位 · #708090

風の掃く尾根の上にて、灯は暗く、山の空気は静けさにて刺し候。頭巾の下に影となれる隠者は、下らぬことを選び候。火の温もりより遠く、足の下の石は冷気のほか何も譲らず、雲は近く押し、かつて知りし道を曇らせ候。これは知恵を求める孤独にはあらず、拒否の高き地に候。下の世、声と灯の光にて賑はしき所は、鉄の意志にて閉め出され候。沈黙は、古き割れたる屋根瓦の上に根を取る苔のごとく集ひ、忍耐にて動かず候。その石の色は石鼠に御座候。

ここにて、空気は石切の鑿にて割られたる粘板の香りを運び候。鋭く、鉱物にて、丘そのものと同じく古きに候。かかる石は幾世紀、北威爾斯の屋根を継ぎ、昼夜降る雨より家を庇ひ、屋根板の上に長く目的なき歌を叩き出し候き。隠者の山はこれより築かれ、層にて古く、各の板は時の手、または庇ひの値を知り眺めを賞づるために決して留まらぬ男らの仕事にて置かれ候き。下の谷にて、屋根瓦の積みは石の小屋の傍らに待ち、縁は荒けれど真に候。時に、一片は重みまたは天候の下に割れ、破片は掃ひ去られ、雑草へ失はれ候。これらは庇ひの残りに候。かつて冷気を閉め出しし破片、今は散らばり、誰にも請はれず候。

霞は転げ入り、春の雨の前の空のごとく重く、世は狭くなり候。霧は各の音を包み、山の輪郭は記憶と成り、滲みて定まらず候。北の国の朝御座候。羊は遠きへ褪せ、粘板の柵に沿ひて形は不分明に候。かかる所にて、天候は単に背景にはあらず候。閉ぢ込み、世の全体と成り候。古き鉄道の軌は景色を抜けて蛇行し、金属の軌は同じ硬き岩より切り出されたる砂利の中に据ゑられ候。過ぐる列車は幽霊に候。かつてここに運ばれし石炭、今は沈黙と残る塵に候。

隠者の小屋の内にて、同じ層の石より築かれたる煙突は屋根の上に上がり、漆喰は崩れ、頂は冬の凍結にて欠け候。内にて、湯沸しは炉の上に坐し、幾年の用より打たれ、縁は沸きたる水と強き茶の残りにて裏打たれ候。かかる物の中に重み御座候。疲れて育ちし手の後に残されたる物の沈黙に候。曇りし柄の匙は欠けし杯の中に休み候。外にて、鍬は壁に倚り、刃は幾十年の土と雨にて孔を開けられ候。ここなる各の道具は簡素にて、用に足り、繰り返しにて擦り減り候。長く持つために築かれ、誰にも全くは属せず候。

今日、隠者の道を歩くため、人は湯沸しより水を注ぎ、湯気を上がる霧のごとく静かに漂はせ候。屋根の上の割れたる瓦を繕ふことは、いかに小さくとも、孤立に面しての世話の仕草と成り候。鍬を土の中に廻すことは、一つの植物のためさへ、沈黙の山に意図にて答へ候。家にて、床を掃くことは、他の誰も踏まぬかも知れぬ道を清くすれども、なほその行ひは己の戻りに候。

今日の色は石鼠に御座候。
Lucky Color: SlateGray — #708090最も高き尾根にても小さき労働を貴殿の灯となし、沈黙の中の安定は望の形に御座候。

隠者へ戻る