Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 隠者

隠者の煙白。中央の鏡に色が映る絵

煙白

逆位 · #F5F5F5

空気の薄き高き所、音の次の石までしか運ばぬ所にて、隠者は灯を近くに保ちて登り、明晰の約束を追ひ候き。今、炎は去り候。灯籠の硝子は触れに涼しく、温もりは放射せず候。残る物は山そのもの、沈黙にて厳しく、時に上の尾根に付く淡き漂ひのほか何も候。黎明に生れ、急がず動き、日が地平の上に割れるや否や溶くる霞に候。この向きにて、隠者は決して下らず候。雲が地の上を塗り、後と先の道を同じ沈黙の中に覆ふ所に留まり候。その漂ひは煙白に御座候。

昔、阿爾卑斯の麓に点在せし小さき村にて、人は遠き頂をある印のために見候き。湿りたる空気が石と会ふとき顕るる優しき吹き、雨には余りに実体なく、消ゆる前に一息のみ続く物に候き。この漂ひは霧にも煙にもあらず、その間の物にて、物語の中に高き所よりの文、さらに進む前に立ち止まる招きとして思ひ出され候き。低地の家にても、庖丁人は煮える鍋より蓋を上げ、廚の中に上がる巻を見候き。遥か上に開く物の、家の響きに候き。廚の満ちは凶にはあらず、何かがほとんど支度されたる印、食事の前の短き霞に候き。

古き世にて、紙を作る者は、朝の畳みと押しの後、手を塵にて覆はれ、表面の上に集まる微かなる残りを見いだし候き。眼と肺をこの細き粉より守ることを学び、その在り方を完成の印と認め候き。墨を受け、新しき物語を前へ運ぶ支度のできたる一枚に候。修道院にて、年を経し羊皮紙は、筆の掻きの前の最後の行ひとして、照らす前に粉を散らされ候き。隠者は、灯の暗きまま、かかる跡の間に立ち、人にてはなく触れの記憶に囲まれ候。仕事の後に残されたる最も微かなる塵、湯気の立つ鉢よりの息のほのか、冷たき丘の上の沈黙の漂ひに候。

窓の外の世は、時にこれを真似候。ある季節、嵐の前または遅き冷えの夜の後、細き霞は野と屋根の上へ滑り、縁を和らげ音を呑み候。全くの霧にはあらず、庇ひを供せず、ひととき前に明らかたりし物よりの優しき隔たりのみを供し候。古き道の上の旅人は歩みを遅くし、この天候の中の余りに多くの急ぎは、踏み違ひのみへ導くことを知り候き。隠者は、谷の呼びを拒み、この漂ひを外套の上へ落ちしめ、拒否そのものの中に慰めを見いだし、世が蒸気と石へ簡素にされたるかのごとくに候。

家にて、人は退く衝動、静けき家事と共に留まる衝動を感じ候。棚を拭くこと、新しき敷布を畳むこと、温もりの上がり消ゆる間に茶の一杯の上に立ち止まることに候。この優しき行ひは、山の頂の隠者の忍耐を映し候。今日、貴殿は杯よりの湯気が縁のすぐ上に残るを見るため立ち止まり、または好みの書の表紙より塵を払ひ、または朝の霞を見つつ遅く息をするために時を取り候。すべて、速く消ゆる物の在り方の中に意味を見いだす仕方に候。時に、灯の不在そのものが導きなることの認めに候。

今日の色は煙白に御座候。
Lucky Color: WhiteSmoke — #F5F5F5沈黙の集まる席を記し、道は変らず待ち候。

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