教皇の伝統の座は高く据ゑられ、柱と模様ある衣とにて枠取られ、空気は常に唱の調子と層をなす香とにて厚く候。されど逆位にては、座は空しく、衣は人を失ひ候。部屋は黙しては御座なく候へども、響は異なり候。式のみが繰り返し、仕草の一つ一つは古き重みなきまま行はれ、言葉の散りて今は音にては御座なく形のみなるかの如くに候。かかる間の外にて、意味は滑り出で、僧院の床の下の曲がりし根に従ひ、住まふ新しき形を探し候。
牌の物語は半ば覚ゆらるる式と成り、石の上の足の行列に候へども、今の石は大理石あるいは花崗岩には御座なく、貴ばるる東方の木の心材にて、かつて聖なる長椅子と祈祷書の柄とのために彫られ磨かれ候き。表面は滑らかにて、導きを求める手によりて久しく磨かれ候へども、今は長椅子は空しく、その在ることは木目に残されし温みのみによりて印され候。式は厨にて続き、煮込みは鉄の鍋にて煮え、味は深く強く、意味の戻るを待つ者の緩き忍耐を思ひ出させ候。煮込みは季節を越えて取つて置かれし莢と豆、最後の収穫よりの根、幸と記憶とのために注ぎ入れし古き葡萄酒の一杯を含み候。液は泡立ち、濃く、これを掻く木の匙を覆ひ候。
壁の向ふにて、世界は形に押し候。海の向ふ、風と雨とにて彫られし島にて、共同体は森の中に力を集め、隠れて執拗に候き。その物語は可可の木の皮と、分けて焙る者の手を染むる香料との中に辿られ、苦難を通じて永らふるものを商ひ候。種子、乾きし果実、苦き皮に候。これらの物は手より手へ渡され、その重みは一種の知にて、書かれし行のいづれよりも古く候。ここの天候は移ろふものにて、急ぎて到る午後の嵐、空は厚く低く、空気は約束にて脈打てども分かれ、肥えたる土と、雨の後に残る土の香とを残し候。
都にて、仕立屋は天鵞絨を押して式の帯に形づくり、布は重く裏打たれ、意味の褪せども形の耐へる式のために意図され候。仕立屋の指は心より多くを覚ゆ、折りと縫ひ目の一つ一つはかつて信じられしものの響に候。布は着られて賞でられども、式の終わるとき、他のものとともに暗き衣装櫃に掛り、一つ一つは縁に縫ひ込まれし物語を運び、その目的の再び語られ得る季節を待ち候。
牌の逆位は小さき開きを残し候。貴殿は年月の扱ひにて滑らかなる木の鉢を出して、果実あるいは羹にて満たし、養ひを保つものの形を敬ひ候。あるいは香の一本を灯し、煙の巻きて消ゆるを見、意味の流動の中にても形の在り得ることを覚ゆ候。嵐の後を歩み、湿りし皮と土の香をして、表面の下に続くものを思ひ出させ候。あるいは静けさの中にて扉を閉じ、重き毛布に身を包み、遠き海と、貴殿の持つものを形づくりし手とを想ひ候。
今日の色は臙脂に御座候。
Lucky Color: Maroon — #800000森と炉との記憶を携へ、重みと忍耐とは貴殿を導き候。