牌を半ば回したる尼院長の在ることは、空の廊下の封じたる扉の如くに候。帳は聖所の上に固く引かれ候。尼院長の持つ巻物は決して開かず、その文字は閉ぢたる唇にて、求める者に何も約さず候。水は足元に溜まれども、映りを自らに保ち、波紋も明かしも御座なく、黙せる面のみに候。この場所にて、内なる真実への道たり得しものは、柵と変はり候。秘密は貴殿を待たず候。硬き土の下に巻く根の如く、下へ押され、手の届かず、なほ生き候。
風の吹く荒野と岩の牧とにて、この守りの言葉を知る草が育ち候。茎は挑む棘にて武装し、涼しさに向かひて咲く房を守り候。幾世紀も昔、羊飼ひと旅人とは袖をこれらの草に擦り、ときに羊毛あるいは布を鋭き葉に引っ掛け候き。蘇格蘭にて、この草は印と成り候き。その花は黙せる耐久のしるし、あまりに容易く領せられ、あるいは解かれることへの抵抗に候き。頭は寒き北風の中に頷き、忘れられたる細道に沿ひて固く房を成し、丘の斜面を頑ななる抱擁にて保ち候。ここで、この草は他のものの育たぬところに栄え、土地の上に自らの境を引き候き。
民話は、その屈せぬ性質の周りに育ち候き。子どもは、どこに坐るかを見るやう警告され、手あるいは膝を棘へ押さぬため候き。されど厨と小家とにて、同じ草は丁寧に収穫され候き。種は絡みたる頭より自由に摘まれ、碾かれ、麦の粉と混ぜられ、乏しき月を通じて家族を養ふ麺麭と成り候き。ある者は種を焙り、ほのかに木の実のやうなる味を引き出し、宥めあるいは強めると信ぜられたる茶とし、苦さは硬き場所と隠れし賜物との思ひ出に候き。強き茎は、一度乾けば、家の箒と成り、草が地に縋りたる同じ頑なさにて、床を掃き清め候き。このやうにて、触れがたきと見えたるものは日ごとの生へ織り込まれ、役に立つ秘密と成り候き。
古き道に沿ひ、旅人は麻あるいは羊毛の切れを棘ある茎へ結び、ある黙せる願ひが風に運ばれ、あるいは草の逆立つ形に守られると信じ候き。ある村にて、根は薬の滋養のために煮られ、鍋より立つ香りは、雨に浸りたる野と、石の土を掘る手の記憶とを語り候き。世におけるこの草の在ることは、静けき抗ひにて、棘の向こうへ手を伸ばす意志ある者にのみ与へられる答へに候き。
今日、人は空き地の縁を歩き、挑む茎を探し、窓縁に置く小さき一房、一種の盾とすることも候。種を集め、碾きて粉とし、素朴なる焼物となし、あるいは開けたる丘の味を運ぶ煎じに浸すことも候。貴殿、その頑丈なる茎より作る箒にて閾を掃き清め、あるいは二つの道の交はるところの草へ、古き布の糸を結び、秘密を風と雨とに乗せ候へ。
今日の色は薊に御座候。
Lucky Color: Thistle — #D8BFD8最も守られたるものも、日を静かに変へ候。