Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 恋人

恋人の薔薇茶。中央の鏡に色が映る絵

薔薇茶

逆位 · #BC8F8F

あひだの静かなる瞬間にて、二人は共に立ち、手は近くに候へども触れず候。言葉は、息の感じられ、分たれざる場に捕らはれ候。まはりにて、世界は有り得て、なほ選ばれざる繋ぎの思ひ出を供へ候。古き物語にて、道の分かれる十字路は常に御座候。俄耳甫斯は欧律狄刻へ手を伸ばし、あまりに早く振り向き候き。冥府の敷居の恋人は、望よりは記憶に呼び戻され候き。ここにて、敷居は代々にて滑らかに擦られたる厨の卓に候。その面は煮たる実と零れたる珈琲の染みにて印され、かつて会話の流れし夕、肘の休むにて木は丸くなり候き。

外の土は乾き、夏の塵を被り、日に老いたる扁桃の皮と鞣革の色に候。遠き町の市の店にて、季の遅き無花果の籠は、皮の厚く割れたる麺麭の傍らに立ち候。辛抱の労と、遅き窯の熱の印に候。肉桂の香は、開け放たれたる瓶より残り、焼く栗の淡き香と混ざり候。それぞれの殻は割れ、古き鉄の盆の上にて冷え候。これらは手より手へ渡さるべき味と触れに候。されども代はりに触れられざるまま、その温みは卓の上にて褪せ候。

地平の山脈は、古き交易の道を思ひ出させ候。商人は驢馬を導き、曲がりたる道を進み、棗と柔らかき羊毛を、銅の鍋と織られたる絨毯と引き換へ候き。朝、霧は時にこれらの尾根の上に立ち、疲れたる肩の上に引かれたる肩掛の如く、谷に降り候。されども夕の落ちるにつれ、風は乾きを運び、空気は塵と、決して来ぬ雨の約にて厚く候。軒の下にて、乾きたる薔薇の束は逆さに垂れ、花弁は内へ巻き、保ち得る香を貯へ候。庭の古き土器は、かつて麝香豌豆にて満たされ、今は昨年の収穫の残り、殻と脆き茎のみを抱き候。

内にて、手袋の一対が低き腰掛の上に休み候。毛革は掌にて滑らかに擦られ、決して起らざりし秋の散歩のために取つて置かれ候き。色褪せたる肘掛椅子の腕に外套が掛けられ、かつて茨にて裂けし裏は継がれ候。これらは、脇に置かれたる意図、始められて終へられざる仕草の印に候。家の沈黙は、夕の深まるにつれて育ち、鎖されざりし錠の柔らかき音にて句読を打たれ候。答へられざる招きに候。

この日をやさしく通るため、人は乾きたる無花果を一握り小さき皿に置き、その甘さを舌の上に留まらせるもよく候。別の人は、木の卓に油を引く一瞬を取り、布を遅き円に走らせ、面にいくらかの光を戻すもよく候。古き束の下より落ちたる薔薇の花弁を集め、懐に挿めば、夏の記憶を近くに運ぶもよく候。あるいは窓の傍らに足を止め、遅き日光の筋の中にて塵の立ち、降りるを見、誰かは継ぐといふ辛抱の仕事を思ひ出し、待ちたるままの外套の裏を繕ふ針を取るもよく候。

今日の色は薔薇茶に御座候。
Lucky Color: RosyBrown — #BC8F8F静けさの中、小さき行ひは言葉の褪せしところに温みを戻し候。

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