二人の姿は共に立ち、いづれも相手へ伸びず候。果樹園は静かにて候。蔓は柵を攀ぢ、柱に巻き、その実は触れられず候。土は一夜の雨の後に重く候。木の下にて、地面は落ち葉にて厚く候。一枚一枚は縁が粗く、自らに巻き、なほ昨季の育ちの記憶を抱き候。手は事故の如く触れ合ひ候。されども二人のあひだの隔たりを渡し得たる言葉は、静けさの中に失はれ候。
古き物語にて、二人は川岸にて待ち候き。渡し守の舟を繋ぐところに候。渡る用意もなく、留まる用意もなく候き。岸は土の畑にて縁取られ、種子は深く沈み、春を待ち候き。されども恋人も、決め得ず候き。厨にて、麺麭は板の上にて冷え、焙られたる穀の香は静かに立ち候。小刀は麺麭の傍らに待ち候。されども誰も最初の一片を切らず候。磨かれたる栗の卓の辛抱の面に候。期待の重みと、先の日の手と杯の残したる跡を担ひ候。それぞれの杯は今、冷えたる茶を抱き、脇に置かれ、忘れられ候。
丘のどこかに、道は林を抜け候。長靴は柔らかき床を圧し、後ろに跡を残し候。そこにて、古き木の幹は近くに立ち、皮は割れ、畝り候。これらの木は、世紀の彷徨ふ者の来て去るを見候き。空気が雨の約にて厚くなるとき、枝の下に庇を求めて足を止め候き。森の縁に抱かれたる村にて、家は同じ強き木より建てられ、梁は露はに、年にて風雨に晒され候。小屋は傾斜の屋根の下に集まり、煙は煙突より立ち候。内にて、人は低き声にて語り、あるいは全く語らず、沈黙は石の井戸に沿ふ苔の如く二人のあひだに育ち候。
商人の荷車は市の後、泥の小路を音を立てて下り、珈琲の豆の袋と肉桂の皮の束を載せ候。これらは、家より家へ旅する慰めに候。交易され、必要となるまで納められ候。月曜の朝、園丁は花壇の傍らに跪き、手を土の深くに入れ、望にて植ゑられたるものを掘り出し候。されども最後の強情なる根を引く前にためらひ候。縫ひ女は灯の傍らに坐り、その仕事は静かにて、布は膝の上に整ひて折られ、最初の裁ちを待ち候。彫られたる匙の木目の中に、擦れたる外套の丁寧なる継ぎの中に、物語が御座候。常に言葉を見出さざる、世話の行ひに候。
天候は地の上に重く降り候。雲は畑の上に坐り、空は鋤にてまさに返されたる濡れたる耕地の色に候。ある家にて、薬缶は火の上に煮え、空気は焙る豆の香、炉の灰、閉じゆく日の湿りにて厚く候。外にて、足音は縁の上に鈍く響き、朝までに褪せる小さき跡を残し候。
今日、貴殿は古き卓の上にて生地を捏ね、次の食のために辛抱強く形作るもよく候。貴殿は木の下に坐り、葉の中の静けさに耳を澄ますもよく候。あるいは掌を地に圧し、そこに抱かれたる温みを感ずるもよく候。貴殿は上衣を継ぎ、あるいは床の塵を掃き、待ちの中に耐ふるものを世話するもよく候。
今日の色は茶に御座候。
Lucky Color: Brown — #A52A2A静かなる地は、貴殿の歩みを落ち着け候。