Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 節制

節制の火赤。中央の鏡に色が映る絵

火赤

逆位 · #B22222

定めて持たるる一対の手は、しばしばそのあひだに器を傾け候。常の成り行きにて、水は一つの杯よりもう一つの杯へ、静かに制御されて動き候。されど今日、流れは的を外し候。液は縁より撥ね、炉の火のかつて燃えたるところ、台所の煉瓦を暗くし、染みを残し候。ここに、均衡はよろめき候。注意深き錬金は、待ちきれぬ動き、または手首の震えにて中断され、優しき配合たるべきものは、突然の溢れと成り候。

昔、石工は川岸より粘土を形づくり、塊を積みて窯と壁とを作り候き。一片一片は、風と雨とに抗ひて立つほど硬くなるまで、炎に耐へ候き。これらの塊は、熱を負ふために築かれ、共同の空間と、家と家とのあひだの路地とを縁取り候き。数世紀を通じて、かかる壁は物語を吸ひ候き。麺麭屋の窯にて膨らむ麺麭、鍛冶の熾火の荒く吹くこと、火の死したる後も長く残る夏の夜の笑ひに御座候。町の均衡が、多き手の協力と、仕事と休みとの定まりたる律とに依りしときの記憶を運び候。

ある朝、窯はあまり早く開かれ候。内の空気はなほ熱にて生き、中の瓦はむらの冷えにて割れ候。別の日、嵐が平原を越えて巻き来たり、雨を屋根の上に滝の如く落とし、鋳物場の前の固く踏み固められたる通りに撥ね候。これらの時、人の制御の限りは明らかにて候。世界は秩序より無秩序へ容易に傾き候。生の地より、家の壁または庭の縁までの道は、滑らかなることも、散らばることも候。元素の結ばれ方に依り候。

ある市にて、麺麭屋は古き窯より一塊を取り出し候。皮は厚く粗く、石との直接の触にてまだらに御座候。割って開かれ、湯気は冷き空気に昇り、冬の心を満たす食事の香を運び候。台所の温かさにて、鍋は奥の火の上に煮え、注意深く見られ、沸き溢れて瓦の上にこぼさざるやうに御座候。静かなる場所にても、不均衡は突然に御座候。落とされたる飲器は煉瓦の床に砕け、かつて粘土を形づくり火に入れたるすべての手の記憶に御座候。

黄昏に炉を掃き清むる儀式、竈の近くに焚き付けを積む儀式、使ひにて焦がされたる硬き面の上に湿りたる布を走らせる儀式が御座候。人は窯の戸を開く前に立ち止まり、冷ゆる音に耳を澄ますか、麺麭を焼型より返す前に、もう少し長く待つかに御座候。庭に煉瓦の列を置きて道を印すか、割れたる一つを新しき漆喰にて繕ふかすることは、均衡の量りを戻し候。こぼれの後、水の落ちつく時を許し、その残す跡の世話をし候。

今日の色は火赤に御座候。
Lucky Color: FireBrick — #B22222温かさは定まり境界は強く、優しき手は均衡の持ち得ざるものを導き候。

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