Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 節制

節制の黒。中央の鏡に色が映る絵

黒

逆位 · #000000

節制の天使は器を持ちて立ち候。されどこの時、一つの杯は傾き、水は石の上にこぼれ出で候。調和の住むべきところ、不均衡は滲み入り候。滴の一つ一つは、意図されたる航路より逃げ、欲するままに水溜りと成り候。注意深き配合の敗るるとき、縁と限りとは見え、落ち着かざる岸より昇る玄武の崖の如く、鋭く容赦なく候。正確に注がるべき杯の中身は、今は止められず走り、地へ浸むるか、川岸を縁取る黒曜の小石の上を転るかに御座候。一つ一つは冷たく、硝子の如く、沈黙に御座候。

こぼれに続く静けさにて、結果の感は残り候。古き村にて、鍛冶の鉄床は鍛冶場の心に坐り、傷つきて耐へ候。鉄は鉄を打ち、逸れたる一撃の一つ一つは、炉の石の上に煤の飛沫を送り候。鍛冶は没食子の墨にて染めたる布切れに手を拭ひ候。洗ひに屈せざる深き色合ひに御座候。これらは、逸れたる努力の染み、中心をわずかに外れたる方へ向けられたる力、かつて保たれたる均衡の、しばし失はれたるところの染みに御座候。布切れは上着の傍に掛り、長き仕事の燼にて重く、空気は焦げの香を運び候。

ほかのところ、田舎にて、烏は実らざる畑の頂に集ひ、羽は石炭の如く滑らかにて光を返さず候。見落とされたるもの、後に残されたるもの、播かれざる種、漏斗よりこぼれたる穀を、鋭き目にて見候。鳥は呼び、その声は歓迎にも不歓迎にも御座なく、自然の偏らざる裁きの思ひ出に御座候。通り過ぐる農人の懐にて、心配にて滑らかに磨かれたる黒玉の塊が、種の袋の傍に休み候。石は吸ひ込む護符にて、かつて嵐と不幸とを祓ふと信じられ候き。

嵐そのものは、真夜中の雷雲の形にて来たり、屋根の上の黄昏の最後の跡を呑み候。空気は厚くなり、世界は静まり、雨の始まるを待ち候。軒の下、鋳鉄の薬缶は竈の上に坐り、先の夕べのために温かさを集め候。器は素朴にして実用、火にて形づくられ水にて冷まされ、外は年月の使ひにて印され候。均衡の外れたるとき、薬缶のあまり長く置かるるとき、湯気は鋭き音にて逃れ、薬缶は料理をする人に、忍耐のいかに容易に沸き溢るるかを思ひ出させ候。

台所の引き出しにて、甘草の根は、散りたる茶の葉と胡椒の実との中に捩れ候。苦く甘く、同時に御座候。後に残る味に御座候。それに手を伸ばす手は、絹の肩掛をも集め候。鍛冶場の布切れに附く染料にて染められ、定かならざる天候の中の旅に着られ候。肩掛は、黄昏の突然の冷気に抗ひ候。空の色を失ひ、先の道が、集まる蔭より立ち出づるもののみにて定めらるるときに御座候。

今日、人は炉より煤を清め、薬缶を灯の光を映すまで磨き、または眠る前に黒玉の一片を床の傍に置き候。ある人は夕べの落ちるにつれて肩掛を着、近く結び、こぼれの後に来る静けさへ入り候。世界はなほ回り、水は道を見出だすと知りつつ候。

今日の色は黒に御座候。
Lucky Color: Black — #000000この一日は静かに過ぎ、均衡は嵐のあひだの休らひに戻り候。

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