皇帝の牌は、逆位にて、その重みを失ひ候。玉座は空席に候。笏と宝珠とは卓の上にあり、用の形のみが残り、会合の終わりしとき引かれたるままの椅子の如くに候。鎧は隅に立ち、その形はもはや満たされず、縁は年月の規律より滑らかに磨かれ候。旗は垂れ、日々の儀式に意味を縫ひ込みし手によりては、もはや高く保たれず候。力は静かに漏れ出で、手順は骨と化し、命令の精神は黙せる遺物と成り候。
ここにて、力の空になる中、土と地と、かつて塵より帝国を築きしものとを見候。ある高台ありて、古き石の横たはり、これを動かしたる手は必要のみならず、石の秩序への信じによりて積み候き。安第斯は立ち上り、稜は段々畑にて印され、世紀の忍耐の労によりて畝を穿たれ候。この斜面にて、皮の粗き芋は下より出され、季節と高さとにて形づくられ、収穫は線のいかに良く従はれしかによりて測られ候。狭き山道に沿ひて、隊商はかつて曲がりて進み、駱馬は深き冷き坑、古き帝国の骨の残るところよりの鉱夫の満たしし袋を載せ候き。
高地の家の心にて、鉄瓶は火の上に煮え、熱によりて強くせし粘土より形づくられ候。厨の卓は硬く屈せざる木目の木より彫られ、刻みと溝の一つ一つは過ぎし食事と保たれし掟との覚えに候。手は石の擂鉢にて種を碾き、繰り返しの動きは植ゑられて収穫せられし作物の調子に響き、これを始めし者の記憶の褪するときにも続く日課に候。壁には羊駝の毛より紡ぎし織物の掛り、糸の一つ一つは決、模様の一つ一つは教へにて、山の峠より下り来る風を外に保つために織られ候。
ここの天候は乾き、空気は薄く涼しく候。塵は隅に集まり、戸口に残されし靴と道具との上に定まり候。雨は来るとき速く打ちて去り、立ち上る土の香を残し、鋭く素にて候。過去の権威の輪郭が環境に纏ふ場所に候。稜の線、石積、植ゑて煮ることの儀式、いづれも、これを動かしし手の久しく不在なるときにも続き候。
この場所を動くことは、力なき形を受け容れ、なほ行ひの中に目的を見出すことに候。芋を皮の剥げ落ちるまで煮て、匙の背にて割り開き候。ひとり食すとも、食事のために卓を整へ、場所の一つ一つを在るべきやうに据ゑ候。外へ踏み出して、指の上の塵の砂を感じ、閾を掃きて明らかにし候。貴殿は固く織りし肩掛に身を包み、その模様は貴殿の知らざる物語を繰り返せども、なほ前へ運び候。
今日の色は土赭に御座候。
Lucky Color: Peru — #CD853F小さき仕事の中にて、品位と忍耐とを敬ふ日に御座候。