皇帝の玉座は黙して立ち、彫りし臂と空しき座とは朝の寒さを捉へ候。空洞にせられし力は、治むる者をも願ふ者をも招かず候。かつて天井を支へし柱は錨を失ひたる心地にて、厳しく候へども意味なく候。旗は硬く掛り、その皺は命令より鋭く候。旧世界の秩序は残り、手順こそ主にて心の逃げし、骨の枠に候。
外にて、冬は壁に押し候。景色は伸び、覆はれて動かず、風のみによりて彫られし吹き溜にて地の記憶を隠し候。声はなく、降る天候の測りたる静けさのみにて、片の一つ一つは限りなき模様の中に自らを繰り返す細部に候。屋根はすぐに溶けざる重みを負ひ、稜と石板とは積もりによりて変はり、季節のあひだ荷を負ひ候。家と家とのあひだの道は、足音にては印されず、触れられざるまま残るものによりて印され、動きの記憶は起こるや否や消され候。
かかる季節にて、畑はその覆ひの下に眠り候。かつて軍の進みしところ、あるいは評定の集まりしところは、今はすべて黙し、空の冷き手の下に留められ候。木は直立して立ち、枝は霜にて輪郭を取られ、葉も鳥もその用を満たさざる秩序の建築に候。最も高き斜面にて、風は皮を見慣れぬ形に鑿にて削り、地自らが不在の心によりて治めらるるかに見え、沈黙の廷に候。布告は与へられず候。天候の規律は自らの権威にて、偏らず厳しく、均一を執拗に求め候。他の月には速き川すら、その鞘の下にて緩く成り、流れより習ひに纏ひ候。
内にて、仕事の続くは続けねばならぬゆゑに候。炉はきびきびと掃かれ、その日の細き粉の溶けて床を浸す前にこれを集め候。扉は黄昏に閂を下ろされ、寒さの進みを外に保ち、儀式は記憶より古く、問はずして従はれ候。麺麭は焼かれ、外の世界の眠るあひだ窯にて膨らみ、祝ひよりは養ひへの仕草に候。亜麻布は風に当てられて振られ、精密にて敷かれ、きりりたる折りは季節の秩序を映し候。食品庫にて、根菜と保たれし果実とは目録せられ、列の一つ一つは去年の収穫の響にて、思ひ掛けぬものを期待せざる者の勤勉さにて調へられ候。
歴史もまたその寒さを保ち候。高き緯度に宮殿を築きし皇帝の物語ありて、広間は模様ある霜にて硝子を被り、廷は輝く天井の下にて抑えられ候き。その領域の旅人は、沈黙の縁に集まる仕方、足音の一つ一つが後ろにて消え、光の世界に足場を得ず棚と横木との上の薄き輝きのみなることを思ひ出し候。これらの物語にて、帝国は人の集まりよりは、地に課せられし規律、意図の不在の中に生き延びる構造の理想に候。
今日、人は鉢を外に置きて降るものを受け、しかる後に内へ持ち来たりてその溶くるを見候。日の出の前に閾を掃きて清め、備への儀式となし、あるいは窓にてしばし留まり、緩き漂ひを数へて、静けさの世界を治め得ることを覚ゆ候。あるいは夕の静けさの中にて、心を用ひて組み立てし文を書き、行の一つ一つを測りたる行ひとなし、一時失せし在るに代はりて言葉の秩序を立たせ候。
今日の色は雪白に御座候。
Lucky Color: Snow — #FFFAFA黙せる型と古き手順の日に御座候。