Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 皇帝

皇帝の濃石鼠。中央の鏡に色が映る絵

濃石鼠

逆位 · #2F4F4F

玉座は風の掃く山の上に立ち、基は古き石より彫られ候。かつて足音は命令にて響き候き。今は苔が鑿にて削りし臂の上を這ひ、座は空しく候。笏はかつて固く持たれしが、敷石の上に捨てられ、鉄の頭は嵐によりて鈍く候。かつて上にて翻りし旗は擦り切れ、眠たき空気の中に力なく下がり候。ここにて秩序の印象は配置によりて保たれ候へども、冠と鎖帷子との下にてかつて打ちし心は退き候。掟は残り、石と誓ひとに刻まれ候へども、意味は滲み出で、権威の足場のみを残し候。

玉座より遠からず、石板の石切場が丘の腹を傷つけ候。人はかつて削りて運び、鎚の調子は法の執行の如く響き候き。今は労の記憶のみが残り候。雨は切りと溝とに集まり、黙せる池を成し候。騾馬の荷車は、軸の錆び、輪の半ば埋もれて、石板の壁の陰に休らひ候。烏は忘れられし働き人の帽の上に止まり、かつてこれを被りし手を探すかの如く坑を覗き候。石切場の縁は一位の木立へ褪せて入り、捩れし幹は規律と朽ちとの境を掴み候。

低地にて、鍛冶は錠を掛けて立ち候。炉は冷たく、鉄床はかつて熟達の道具にて候き。今は不在の静けさを吸ひ候。一振りの刃、その縁は研がれもせず鈍らされもせず、木の仕事卓の上に横たはり候。傍らにて、帳面は綿密なる寸法と道具の一覧とを記し、品の一つ一つは心を用ひて印され候。塵は頁に定まり、線を和らげども記録を消さず候。職人の戻らざるときにも、手順の規律は耐へ候。

嵐の雲は遠き稜の上に集まり、光を抑へ候。空気は近づく雨の味を保ち、金属の如く涼しく候。風は地に押し、裸の岩と空しき外屋との輪郭を辿り候。古き都にて、重なりし石の屋根は互いに固く押し、霧雨を防ぎ候。路地は輝き、水溜は空しき窓縁を映し、別の季節には迷迭香の鉢の立ちしところに候。鐘は教会の塔にて鳴り、その音は低く重く湿りを通じて運ばれ、約束と習ひとによりて主に保たるる構造を聴く者に思ひ出させ候。

炉にて、鋳鉄の鉄瓶は五徳の上にあり、長き柄の火掻は煉瓦に寄り候。これらの物はその場所に残り、掻き、世話をし、温みを点くる手の戻りを待ち候。戸棚にて、川石より彫りし擂鉢、その表面は幾代によりて滑らかに磨かれ、種あるいは塩がその意図に会ふを待ち候。道具の一つ一つ、器の一つ一つは用の記憶を保てども、今は、用の触れを与へしものの後まで働きの永らふることの証として仕へ候。

今日この場所に居るには、人は雨の後の荒原を歩み、石切の人の定めし道を踏み、金雀枝の下にて靴が緩き破片を掻き候。貴殿は冷き炉の傍らに坐し、鉄瓶をその台に据ゑ、かつて火の爆ぜしところの静けさに聴き候。帳面あるいは暦の頁を繰り、他の人の作りし一覧を辿り、その下に貴殿自らの線を印し候。あるいは、嵐の雲の流れ入るあひだ窓の近くに静かに坐し、世界の執拗さのみにて足るとなし候。

今日の色は濃石鼠に御座候。
Lucky Color: DarkSlateGray — #2F4F4F意味の遠きときにも、物の確かさは貴殿を留め候。

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