路の縁にて、若きさすらい人は靴を上げ、どこへ落つるかを知らず候。語りと、描かれたる牌とにては、日の当たる石と犬の陽気さとを信じ候。されど今は、曇りの朝が土地を覆ひ候。空は低く、雨を醸す雲にて綴られ、気は調べられざるまま残されたるものの静けさを運び候。負袋は継がれ摩耗し、布は煤の散る段の上の多くの不注意なる休みと、昨の季節の火の冷き骨との跡を示し候。手には杖のあり、かつて熱意にて磨かれたれども、今は鉄の橋と崩れつつある線路とに対する、計画なき擦れにて曇り候。
明るさの滑り去る後に耐ふるものの、微かなる存在にて世の輪郭づくられし路地を、旅人は跳ねて進み候。建物は両側に聳え、その石の正面は、数十年の市の煙と、霧の辛抱強き触れとにて筋を引き候。戸口は植木の鉢に挟まれ、薫衣草はほとんど尽き、唯一栄ゆる植物は古き地衣にて、忘れたる腰掛けの面と、雨樋の縁とを撫で候。旅人の笑ひは、常に明るけれども、今はためらはしく、一と息を示す空模様、雨とはならざる霧雨、晴れもせず疲れもせざる空によりて籠もり候。
古き区画にて、旅人はその日閉ざされたる鍛冶の店の前を過ぎ候。閾の鉄床は冷たく静かにて、その面は炉と野心との輝きの中にて形づくられたる道具の物語を保ち候。丸石は昨日の霧にて滑り、足の下に柔らかき打音にて響き候。なほ旅人は上を見、狭き煙突の積みと石板の屋根とに引かれ候。それぞれ同じ市の残りにて層をなし、それぞれ耐への静けさの中に、冬より冬を生き残り候。角を曲がれば焙炉のあり、窓は低き火にて曇り候。焙る者の麺麭は打ちたる錫の盆に休らひ、皮は厚く心強く、粉と、黄昏に窯の冷ゆるにつれ沈む灰とより塵を被り候。
世の一と息を、旅人は感じ候。次の一歩は量らるべく、前へ跳ぶ前に地は試さるべし、と思ひ候。下宿の後ろの庭にて、柳蘭の絡みは石の敷きの積みの隣に生え、植物は漆喰の敗れたる隙間を縫ひ候。芋は夕食のために傍らに置かれたる麻袋の中に休らひ、なほ最後の収穫より付く土に印され候。上にて、鳩は針金に止まり、冷き吹き通しに対して羽を逆立て、見えざる何かの信号を待ちて動かんとし候。
これらのものより、さすらい人は静かな慎みを学び候。靴の先にて炉石に円を描き、跳ぶ前に一と息つくことを自らに約束することも候。日の終りに錫の盥にて手を浸し、水の気に合ふまで冷ゆるに任せ、すべての瞬間が急ぎを呼ぶに非ざることを思ひ出すごとも候。植木より尽きかけたる薫衣草を集め、床の傍らに置き、いかなる旅の前にも眠りへ傾くる穏やかなる香りとすることも候。霧の上がるにつれ段に坐し、煤の古き線を指にて辿り、前へ舞ふ前に地を調べることを思ひ出すごとも候。
今日の色は薄墨に御座候。
Lucky Color: DimGray — #696969定かならざる地を渡る前に一と息つき、緩く定まりたるものが次の一歩を導き候。