Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 旅人

旅人の霞桃。中央の鏡に色が映る絵

霞桃

逆位 · #FFE4E1

旅人は、知るところと知れざるところとの縁の間に懸かり、踵は崖の唇の上にてほどけ、気を信じ候。逆位にては、これは信の喜ばしき跳ねに非ず、地のなほ形を成しつつあるうちに踏まるる一歩にて、確かむべきものを見逃す危きある軽さに候。負袋は先の旅に対してあまりに少なし、あるいはあまりに多き戯れが旅人を重くすることも候。下の路にて、朝は静かに押し寄せ、川岸より低き霞の昇り、石を和らげ、山道をぼかし候。世は穏やかに見ゆれども、足場は見えず候。露のなほ蔦に付き、庭の薔薇の早き霧に罩めらるる刻に候。

古き港町の歴史にて、日は海より漂ひ入る霧とともに始まり候き。輸入の花弁の箱の周りに巻き候。商人は仕事を始めんと急ぎ、時に湿りにて磨かれたる丸石に滑り候き。かかる霧の中を、焙る者が一塊を運び、わずか三歩先も見えず、競争相手の戸に己を見いだし候き、といふ話の伝はり候。かの朝の厨にて、亜麻の布巾は押されて茶碗の傍らに置かれ、縁には攀づる薔薇の模様の縫はれ、未だ目覚めざる庭を思ひ出させ候き。

ある地方にて、霧はそれ自身の季節に候。高地の谷の羊飼ひは、最初の真の晴れ間を待ち、羊の淡き気の中へ褪するを見候。祭の日には、村人は香高き花弁の飾りを掛け候き。色のためならず、温かさと繊細なる甘さとの記憶のため、日がやがて冷気を溶かすといふ約束のため候。夜明けに集めたる花弁は、なほ夜の涼しき触れと、隠れたる土の暗示とを保ち候き。朝食の糕に用ひられ、柔らかき乾酪へ折り込まれ、あるいは熱き水に浸され、日の知れざるものの前に気を鎮め候き。

ある南の厨にてよく知られたる、繊細なる菓子の御座候。その皮は窯にわずかに口づけられたるのみにて、川に沿ひて滑る霧の如く柔らかく候。果実の蜜漬の一匙と、砂糖の微かなる散らしととともに供され、心のあまりに早く跳ねんとするときに、感覚を地へ着くるもてなしに候。家族の家にて、襟巻は椅子の背に掛かり、息の如く細く紡ぎたる糸にて織られ、気の窓硝子に涼しく圧する朝に借りられ候。かかる襟巻を持つは、安らぎと慎みとをともに感じることに候。待て、見よ、急ぐなかれ、と告ぐるものに候。

逆位の旅人は、跳躍の前に、世の形を成すに任す一と息を求め候。今日、貴殿は薔薇の花弁を書物へ押し、その形に穏やかなる遅れを思ひ出させ候へ。霧の浮かぶうちに園をゆっくり歩み、路の上の己の足音を聴くことも候。花弁あるいは果実にて茶を点て、静かに含み、温かさの胸に広がるを感じ候へ。あるいはただ柔らかき襟巻を首に結び、すべての旅が急きたる始まりを要するに非ざることを思ひ候へ。

今日の色は霞桃に御座候。
Lucky Color: MistyRose — #FFE4E1穏やかさを定かならざる刻に留め候へば、静かな一と息は見えざる地を示し候。

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