Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 教皇

教皇の黒。中央の鏡に色が映る絵

黒

逆位 · #000000

高き背の椅子が広間の前にて空しく立ち候。正位の時には、人がそこに止まり、静けさが会衆の上に定まり、空気は香と頁の薄き擦れとにて厚く成りしこと候き。今、座は領せられず、式の模様は続けど精神は他所へさ迷ひ候。書は祭壇の中ほどに開きたるままにて、頁は翻れども、隙を満たす声は御座なく候。沈黙は不在には御座なく、儀式の下を走る低き唸りにて、馴染みの仕草は、常になされ来たりしゆゑにのみ行はれ候。

古き物語にて、かかる瞬間は辻に到り候。祭司は火山の斜面に立ち、草鞋は冷やし石に沈み、幾世紀の前に山が煙と飢とを空へ吐きしところに候。かつて、町の人は縁の周りに集まり、塊あるいは葡萄酒の瓶を供へ、下にて轟くものを和らげ得ると信じ候き。年は過ぎ、山の口は灰と忘れられし銭とにて固まり候。道は今なほ歩まれども、祈は薄く、岩に対してのみ響き候。最後の噴きの久しく後に生まれし子どもは、縁にて遊び、小石を深みへ投げて、遂に来らざる答に聴き候。

厨にて、鋳鉄の平鍋がその鉤より下がり、表面は数十年の夕食によりて味を付けられ候。料理人の手は記憶によりて働き、祖母のせし如く薄き焼き麺麭を返し候。家の調理法は久しくその意味を失ひ、何がこれを特別にせしかを思ひ出す者は御座なく候へども、なほ鍋は毎日曜に用ひられ、その重き重みは慰めに候。別の日、縫ふ女は灯の煤にて染みし指にて外套を繕ひ、死にゆく火の薄き光によりて働き候。静かに縫ひ、針は厚き羊毛を貫き、動きの一つ一つは母より学びしものの繰り返しにて、目的は滲めども行ひは精密に候。

炉より遠く、夜は都の狭き路地の上に折り候。雨は帳にて降り、溝へ零れ、重き外套にて路地を下る灯を点す者の足もとに溜まり候。古き商ひは耐へども、見上げる者は御座なく候。灯の一つ一つより引き出しし輝きは湿りに失はれ、窓の後ろの顔は他のものによりて照らされ候。逸れし猫が樋に沿ひて滑り、縁石の傍らに捨てられし石炭の荷車の影に押し入り候。荷車はかつて要りしが、今は遺物にて、手の跡と、鉄に纏ふ薄き金属の匂ひとによりて印され候。

これらは、意味の退くときにも常になされしことをなし続ける者の印に候。火山の石、平鍋の重み、灯の硝子の球、沈黙の中に縫はれし外套、いづれも、何故の漂ひ去りしときにも纏ひつかれし形の残りに候。これは空しさには御座なく、執拗さ、それ自体のために保たるる儀式に候。

今日、貴殿は窓縁に石を置き、言葉なき物語を覚ゆ候。古き重き鍋にて朝の食を煮、あるいは世界を浸して静にする雨の下を外に歩み候。最初に誰がこれを与へしかを、もはや知らざるとも、何かを繕ふことを選び候。

今日の色は黒に御座候。
Lucky Color: Black — #000000理由の失はれしときにも、耐へるものの中に確かさは御座候。

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