Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 教皇

教皇の赭。中央の鏡に色が映る絵

赭

逆位 · #A0522D

教皇は伝統にて二つの柱のあひだに坐し、伝統と儀式との人にて、手を厳なる教へに上げ候。座の覆へるとき、柱自らが割れ、石の塵は床に散り候。長椅子の会衆は足を擦りて呟き、模様の現るるを待てども、古き句は響きなく響き候。空気は、常は香にて重きが、薄く成り候。式の繰り返しは続けど、意味の髄は滑り出で、音と仕草とのみを残し候。

かつて式が共同体を地に付けしところ、その心は今は他所にあり候。残るは世界の手に触れ得る片、変化の黙せる証人に候。回廊の長さを走る焼きし粘土の瓦、触れれば乾きて粗く、今は名なき手によりて幾世紀の前に敷かれ候き。地自らを思ひ出させ候。硬く、崩れ易く、頼もしきことに候。厨にて、多斯加納の土より碾きし顔料の瓶が棚に並び、木の板の上にて冷ゆる塊の傍らに候。この塊は丸く、古き小麦の殻にて塵を振られ、皮は窯の口づけより割れ候。日曜の午後に麺を延ばす女の手の中にて、別の地の記憶が波打ち候。笑ひの合唱、煮られし赤茄子の尾を引く香、土地の陶工の作りし鍋の中の木の匙の掻き、その轆轤は古き歌の調子にて回り候。

仏蘭西道、古き巡礼の道の上の旅人は、別の印を見候。丘は立ちて落ち、橄欖の木と葡萄とにて継がれ候へども、丘の一つの麓には、通る者の靴を染むる土の縫ひの走り候。教会にて、中世の壁画は壁に褪せ、頑固にて耐へる色にて描かれし物語に候。ここにて同じ二つの日は御座なく候。時に空は澄みて硬く、時に乾きし風が塵を隅と割れ目とに掃き、雨戸と、農家と僧院との入口を同じく印す素焼の甕とに擦れ候。

市にて、商人は今なほ扁桃と蜂蜜とにて味を付けし小さき菓子を交易し、皮は風に削られし手と古き調理法とを囁き候。同じ手は土より新しき器を形づくり、過去を現在へ捏ね、儀式と必要との線を滲ませ候。天候すら印と成り候。日の低く成り、短き戯れの雨の後の熱き土の香にて空気の厚き午後、遂に満たされざる約束に候。

形がその魂を失ふとき、注意は生き延びるものへ移り候。触れ、味、掌の中の古き瓶の感、日に焼かれし広場の上の足音の音、肥えたる地の香を運ぶ風の記憶に候。今日、貴殿は掌を粘土の壺に押し、煮ゆる豆の鍋より立ち上る湯気を吸ひ、あるいは家の形見の鉢の磨かれし縁を辿り候。指を入れる土の一区画を求め、あるいは古きぼろより作りし紙に文を書き、丁寧に折りて日の差す卓の上に残し候。

今日の色は赭に御座候。
Lucky Color: Sienna — #A0522D旧世界の土は、貴殿の手に押し入り候。

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