月の下の道にては、世界の一部のみが顕はれ候。一方は、空き地の縁にて毛を逆立てる野生の犬、他方は、定かならぬ光を目に映す狼にて、いずれも秩序と本能との境を見守る者に御座候。潮は引きては寄せ、道の狭まるところを守る二つの塔の根の石を舐め候。石の形は安全を示せども、その下を過ぎたるすべての記憶を抱き候。知るものと知らぬものとの境は、砂と水との間の漣のごとく薄く候。
かかる道が世界に顕はるる土地も御座候。古き市の縁の深き港にて、水面は空の映りにて暗く、錨を下ろしたる漁船が流れに穏かに揺れ候。船人は夜明けの直前に網を整え、幾世紀も戻る潮を頼み候。海の広さは、遠き灯台の夜青の線のほかは途切れず、古の商人が香料と畳みたる絹とを重く船倉に積み、異国の岸へ静かに滑り行くのを見候き。神話にては、かかる水は幻を求むる者を呼び、神と人とが謎と蜃気楼とにて真実を交はす場所に御座候き。
内陸の遠く、織りたる毛布が寝台の足元に畳まれて休み候。その繊維は、家の静かなる夜更け、古き時計の刻む音のほか何もなき時刻に、固く紡がれ候き。幾代も保たれたるこの毛布は、待ちのときに出され候。熱を持つ子、帰りたる旅人、深夜に足音の帰還を聴く親に御座候。その重みと温もりは不定を慰めに変へ、床を影のごとく動く、口にせぬ憂ひに対する盾を供し候。遠き村にては、かかる性質の肩掛と外套とが、炉端の語り手を庇ひ、炎が聴く者の注意を捉へて保つうち、話が明滅する室を縫ひ進み候き。
壁の外、日没の後の空は、卜者と天文を見る者との野に御座候。航りは、日照の確実によらず、星によらねばならぬ時刻に御座候。船人はかつてこの空にて羅針盤を定め、欠けたる月の昇りと降りとを見、上なる見えぬ流れが旅を導くことを頼み候き。ある夜、空気は静けさにて重く、音は松葉を過ぐる風の息、あるいは石に当たる水の穏かな打ちのみに御座候。世界の上に静けさの乗り、真に暗くもなく、すべて顕はれもせぬこの天候のときに、秘めたる事はより容易く語られ、交はしたる約束は、親しみの間に留まることを託され候。
厨にては、古き陶の鍋が、宥め回復するための煮汁を煮るに用ゐられ候。その面は歳月の跡を持ち、内にて煮たる食事の一つ一つが、憂ひに面しての望の仕草に御座候。厨人は静かに攪拌り、薬缶の最も微かなる笛を聴き、水と薬草とが忍耐と時とにより、より大いなるものへ変はる瞬間を印し候。僧院と遠き山の小屋とにて、かかる鍋は最も長き夜、熾火の上にて煮え、昼の光の遠きとき養ひを供し候き。
今夜、貴殿は岸辺を歩みて潮を聴き、遠き灯をして思ひを導かせ候へ。古き肩掛あるいは毛布が御座候はば、静かな窓の下にて読み、あるいは書くうち、肩へ纏ひ候へ。夜更けの静けさを省みの庇となし、日記を保つならば、眠る前に夢を書き付け、その時刻が朝までこれを安全に保つことを頼み候へ。
今日の色は夜青に御座候。
Lucky Color: MidnightBlue — #191970半ば見える道は静かに歩み、長く残るものを頼む者を助け、夜の静けさが穏かな導となり候。