瓶は乾きたる池の縁に置かれ、上にて揺がざる星は地の上に涼しく遠き光を投げ候。かつて水がその揺らめきを映したるところ、今は硬く成りたる縁のみが残り、熱と放置とよりわずかにひび入り候。流れの不在は触れ得るものに候。かつて満たしがありたるところの静けさにて、器の口は口を開け、来たらざる帰りを慕ひ候。
縁に静けき執拗さが御座候。収穫の後に休ませられたる畑を切る旧き歩道の地、時と多くの足の通過とにて平らに押されたる土を思ひ候へ。風の運ぶ話にて、旅人は夏の草の転ぶ平原を越え候。草は高く育ち、種を結び、次いで枯れ、乾きたる茎の一続きを風の中に鳴らして残し候。農の小屋の屋根は塵にて被はれ、柵に掛けられたる擦りたる軍の上衣の重き布はこの見た目を分ち候。日の光にて褪せ、堪へにて印され候。蔵の帆布の袋は、繕はれて用を変へられ、床の上に穀にて満たされたる樽の傍に坐り、その面は痩せと豊かさとの両方を労したる手に粗くして見慣れ候。
台所にて、米の外殻が割れたる袋よりこぼれ、卓を横切つて散り候。胡荽の種は乾きて円く、竈の傍の小さき陶の甕に蔵められ、その香は微かにて候へども残り候。葦より編まれたる筵が戸口を縁取り、素足の下に肌理は粗く、入口に広き縁の野の帽子が掛かり、その頂は天候の変はりを待ちつつ過ごしたる多くの夏の染みを帯び候。階上、よく用ひられたる旅袋が、その隅は幾年の旅より擦られ、衣櫃の傍に畳まれて横たはり、布は止まりて未だ再開されざる旅の形を抱き候。外にて、畑の空けられたる後、地は去年の作物の逆立つ思ひ出を残され、短く頑丈なる茎の列が風に対して固く着き候。
家の先、古き都が平原の縁より起ち、その壁は幾世の日と塵とにて柔らかくされたる石塊より築かれ候。街は市の店のあひだを曲がり、その庇は木の上に張られたる重き布より作られ、時にて褪せ候へどもなほ陰の分量を与へ候。都の境界に沿ひ、古き陶器の破片が半ば埋められ、数へ切れぬ嵐にて鈍り候。遠き牧地にて、羊は乾きたる植物の最後の房の周りに叢がり、その毛は風景そのものの色を拾ひ候。騾馬の列はかつてこれらの隊商の路に沿ひて香料と品とを運び、その荷は厚く頑丈なる帆布に包まれ、すべての旅は辛抱と適応との証に候き。
空気の静止し光の鋭き日、地平は静止にて震ふやうに候。天候は雨の約をもたらさず候。待つことに費やされたる午後の確かなる温かさのみにて、畑とその住む者とは諦めつつも執拗に候。世界はこれらの瞬間に息を止め、次に来たるかも知れぬもののために静かに用意し候。
早く起つならば、貴殿は敷居を掃き、手の下の固き地を感じ、現在に自らを錨し候。日の入る窓敷に乾きたる種の小さき鉢を置くことは、待つことの静けき目的を尊び候。旧き野の帽子を身に着け、或は耐久ある袋を繕ふことは、仕事と天候とにて形づくられたるものの用を貴殿に思ひ出させ候。磨かざる穀より作りたる食事を味はひ、辛抱の中に残る確かさとつながれ候。
今日の色は濃砂に御座候。
Lucky Color: DarkKhaki — #BDB76B閾にて身を鎮めれば、貴殿は水の帰りを信ずることを学び、静かに待つものは力を集め候。