廊下の終わりの、静かにて空気の動かぬ部屋にて、古き冠は震へたる人の手の中に待ち候。牌の骸骨は滞り、薄闇の光景を去ることを拒み、その大鎌は不確かにて、時刻はなほ打たれず候。夜は耐へ候。窓は狭く、朝の確かさはなほ遠き丘の上へ溢れず候。冠の尖りは、数へ切れぬ触れにて鈍り、盛りを久しく過ぎし炉の熾火を思ひ出だし候へども、誰かはなほ近く坐し、着かざる灰より温みを引き出し候。外の世は暁へ向かひて動き候へども、内にて終わりの重みは拒まれ、旧き秩序は強情なる矜持にすがり候。その煉瓦の色は火赤に御座候。
炉そのものは、地の深みより昇りし塊より築かれ、忍耐ある手に形作られ、古き窯にて焼かれ候。これらの煉瓦は、かつて川岸または粘土穴の一部にて、念入りに積まれ、労働の、庇ひの、その抱擁にて温められし日々の麺麭の物語を結び候。世代は慰めのためにそれらの近くに集まり、嵐が窓を鳴らし、子が近くに夢見るあひだ、その顔に沿ひて風雨に晒されし線を辿り候き。されど最も強き窯の煉瓦さへ、年月の上に割れ、縁は重き靴に欠け、あるいは足場を求める蔦の遅き這ひに欠け候。なほ、ある者はそれらを替へることを拒み、代わりに漆喰にて綴じ、季節ごとに広がる裂け目を埋め、新しき炉の要ることを受け入れることを肯んぜず候。
神話と記憶は、これらの壁に絡み候。古き市にて、大聖堂を築きし石工は、その仕事が耐へと無常との両方なることを知り候き。焼く前に柔らかき粘土へ印を押し、幾世紀の後、鐘楼の傾くとき、その名が塵の中に再び昇り得るやうになし候き。田舎の奥にて、鍛冶の小家の後ろに炉は輝き、同じ粘土焼の石の棚に沿ひて火箸と槌は置かれ候。鍛冶は錆びし鉄を作り直し、刀を再び犁の刃と蹄鉄となし、主張の響く響きにて候。いまだならず、いまだならず、仕事は続く、と。別の時、荒れし窯は石南の中に独り立ち、その煉瓦は今や苔と小さき鳥の巣の家にて、拒まれしすべての終わりと、それにかかはらず育つすべてのものとの記念に候。
冬の天候は押し入り候。風は古き壁の隙間を見出し、湿りは川より這ひ上がり候へども、家の内にて、火はどれほど煙が割れし煙突を通して戻るとも、毎暁再び築かれ候。誰かは藥罐を持ち上げ、煉瓦の上に置き、蒸気の最初の兆しを待ち候。保存されし果実の古き壺は炉棚に並び、何年も前に封ぜられ、札は褪せ候へども中身はなほ甘く候。今日、手放すことを拒むことは、日々の献身の行ひと成り候。昨夜の灰より炉を掃き浄め、焦げざるやうに緩く煮し煮込を返し、念入りなる針にて外套を繕ひ、季節の転ずるときにも火へもう一本の薪を置くことに候。これらは希望と抗ひの仕草にて、外の世が変はりを強ふるときにも、見慣れたるものを固く抱くことに候。
人は家の最も古き煉瓦へ掌を押し、日と粘土の記憶を感じ、あるいは世代を通して渡されし家の道具を繕ふことに向かい候。鍛冶場または窯の傍らに坐し、想像の中にのみにても、そこで形作られ、再び形作られしすべてのものを思ひ出だし候。あるいは炉を、いかに卑しくとも世話をし、それを浄め、分たるべき簡き食事を用意し、なほ滞る温みを尊び候。
今日の色は火赤に御座候。
Lucky Color: FireBrick — #B22222貴殿の手は築きたるものを記憶し、待つ終わりと残る熾火とが御座候。