騎手は前へ進み、手袋の手は一輪の花を持ち、二つの遠き塔のあひだに破るる光の如く淡く候。空気は冷え、定まらず、知れるものを変へる知らせをすべてのものが待つやうに候。男の後ろにて、町は動き候。屋根は露に煌めき、門は蹄の音へ軋りて開き候。地は夜の縁に吊されたるやうに感じられ、生の旧き形は溶け、名なき新しき何かが沈黙の中に形を成し始め候。
東より、日は到着し候。まず噂として、次いで林と川の上を這ふ光として候。ここに重き房の果実があり候。その皮は、古き交易の路と、香料を積みたる港を通してそれを運びし者の手とにて印され候。その果実は橙に御座候。寓話にて、王女はかつてこの果実の皮を剥き、香りは沈黙の部屋を満たし、悲しみの終わりを知らせ候き。区分けられ甘き果肉は、旅人が十字路にて分かつもの、子が祭の朝に握るものに候。窪みて苦き皮は蜜漿へ煮られ、保存する忍耐にて、終わりが味はひ得るものとなり得ることを思ひ出だし候。冬の厨にて、この果実は窓に下がり、弱き日を受け、温みの戻ることを約束し候。
海の近くに、林が季節の移りに応へる地方が御座候。ここで花弁は房となり落ち、収穫の後に地を覆ひ候。人々は最初の光に集まり、手に籠を持ち、残るものを摘み候。彼らは譲ることと手放すことの巡りにより生き、旧き作物の去りたるゆゑにのみそれぞれの収穫が可能なることを知り候。物語は彼らのあひだを渡り候。箱にて重き船が、塩の水と嵐を越え、果実を貢と希望として運ぶ話に候。市にて、乾きたる花は布へ押され、年の変はりししるしとして肩に巻かれ候。
空が地平にて燃ゆるとき、漁る人は綱を結び網を繕ひ、天候の雷より静けさへ転ずるを見候。船人はかつて空の色合ひを読み、次の風の恵み、あるいは警告を推し候き。嵐の最後の過ぎ、海がやがて渡海に安全となるしるしに候き。風雨に晒されし日誌にて、大いなる変はりの後の朝を印す記入が御座候。光は破れ、柔らかかりき。世は異なり候へども、なほ多くのものは同じに候き、と。一つのものの終わりは、かくして次の輪郭のための場所を作り候。不確かさの明らかなる空間にて、次の航海は始まり候。
木の卓にて、誰かは区分けの鉢を出し、白い筋を念入りに除き、鋭くかつ甘き味を供へ候。厨にて、皮は生地へ擦り込まれ、空気を記憶と待ち受けとにて満たし候。子は、窓にて雨を見つつ、果実の皮へ丁子を刺し、戸の上に下がる模様を作り候。これらは小さき仕草にて、移ろふ世を手に触れ得るものとなし、一つの形の溶くるとき、別の形が静かに現るる瞬間を尊ぶ道に候。
貴殿は冬の果実の皮を剥き、その皮を庭へ散らし、旧き憂ひが新しきものとなり得ることを自らに知らせ候へ。暁に手紙を書き、終わりたるものと、始まりを願ふものとを名づけ、次いで花の鉢の下へ挟み候へ。砂糖漬けの皮を貴殿の麺麭へ掻き入れ、道のちょうど貴殿の道と交はる者と分ち候へ。香丸を戸口の上に下げ、その香りが、あらゆる終わりはまた通過なることを貴殿に思ひ出だすに任せ候へ。
今日の色は橙に御座候。
Lucky Color: Orange — #FFA500新しき輪郭は明るく柔らかく待ち、失ひの後にも味はふべきものは残り候。