天使は一つの杯よりもう一つの杯へ水を注ぎ候。されど液は外れ、地へ落ち候。注意深き流れは失はれ、量りたる手は揺らぎ、配合さるべきものは、日に温まりたる粘土の上に溜まり候。生の調和への試みの急ぎとこぼれとの中に、正確は滑り、地は場所を見出ださざりしものを吸ひ候。古き河床の石のあひだに、沈泥は集まり、昨日の雨にて洗ひ上げられ候。岸は、かつて整ひて分かれ、水の溢るるにつれてぼやけ、地へ浸み、かつて乾きたる塵のありしところに泥を作り候。
道の交叉での躊躇は、壌土に足跡を残すことも候。柔らかく屈し、霧雨の後、靴は少し深く沈み候。畑の返されたる畝は、春の最初の雷雨の後に湿り、境のいかに容易に消ゆるかを示し候。犁の抵抗に会ひしところ、古き根は記憶に附き、遠き丘より運ばれたる種は、面の下の静けさに眠り候。長く手と馬とにて働かれたる農地は、作物のあひだの線に物語を語り候。昨年の収穫の残りは分解し、新しきものを養ひ、巡りは速くも優しくも御座なく候。
旧世界の物語より、流浪の僧はかつて静かなる道を旅し候き。草鞋は薄く、袍は継がれ、薪の窯にて焼きたる麺麭を携へ候き。皮は粗く厚く、内は温かく養ひ候き。その塊は、僧院の摩れたる卓にて割られ分たれ、忍耐と長き仕事とを表し候。されど落とさるるとき、崩れ、屑を床の割れへ散らし候。台所にて、年月の使ひにて滑らかなる擂鉢と擂粉木とは、乾きたる香料の莢を粉に碾き、押しの転ずるにつれて香は昇り候。ここに、遅く定まりたるものは、一瞬の滑りへ道を譲り、多き手の仕事は散り、集められ、再び始めらるることを要し候。
台所の先、果樹園の縁にて、栗は晩秋の風に落ち候。殻は輝いて硬く、落ち葉の中を転げ、木の下の落葉に休み候。栗鼠は、自らの労働にて忙しく、秘密の蔵に埋め、しばしば忘れられ、新しき若木の約束は暗き中に残され候。田舎の道にて、羊飼の杖は、時と天候とにて磨かれ、群れの動くとき垣の柱に寄り候。蹄は地を押し、日々の生の柔らかき執念にて草を攪拌し候。納屋にて、小枝にて作られたる箒は閾を掃き、塵と藁の迷へる片とを集め、明日の帰りのための場所を清め候。
嵐の後の休らひにて、土の畑は、なほ記憶にて重き空の下に伸び候。遠き雷は褪せ、空気は、地が自らを返す如き香を立て候。世界が、何も永遠には収められずと人に思ひ出させるが如くに御座候。杯よりの水の滑りは、喪失には御座なく、招きに御座候。騒ぎの後、物の集まるところ、休み落ちつくところに気づくために御座候。跪きて植ゑ、麺麭を分ち、床を掃き、舗はれざる道に沿ひて静かに歩く意志の中に、一度傾きたる均衡は、その遅き戻りを始め候。
今日、人は自らの手にて麺麭を焼き、木の板の上にて生地を捏ね候。入口を掃き、外より漂ひ入りたるものを集め候。木の下より栗または種を集め、掌を地へ押し、地の屈し、また支えるさまを感じ候。
今日の色は茶に御座候。
Lucky Color: Brown — #A52A2A今日の忍耐は、地に着きたる手より育ち候。