Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 戦車

戦車の薄墨。中央の鏡に色が映る絵

薄墨

逆位 · #696969

古き嵌石の床の上にて、二頭の人面獅は互ひより背を向け、足は異なる方向に据へられ、引綱は二人のあひだに弛み候。御者は手綱を張る代はりに、垂れさせ候。車は前へ音を立て候。意図のゆゑには御座なく、車輪はどこかへ転ばねばならぬゆゑに候。古き町にて、戦車は誇りの物に候。されども今日、その旅は落ち着かず、同じ石の街路を巡り、角を曲がるのみにて同じ正面を再び見候。鍛冶は鉄屑を戸の近くに積み、麺麭屋の窯より石炭の遠き煙が漂ひ、敷石は数へ切れぬ足にて滑らかに擦られ候。空気は決して十分には到らざる雨の約にて重く、頭上の雲は屋根に集まる煤と同じに候。

伝説は、御者が目的を以て駆りし時を語り候。門へ向かひ、山の峠を抜け、車輪が朝霧を切るときに候。されども今、獣は焦点を失ひ、道は確かならず、戦車は動きのためのみに動き、車軸は軋み候。道端に沿ひ、川石は散り、子どもに遊戯のため拾はれ、あるいは運のために懐に運ばれ候。触れに涼しく、面は年々の水の上を過ぎるにて曇り、遅き執念の流れのなしたる辛抱の旅の思ひ出に候。商人は通り過り、金具にて満ちたる袋を担ぎ候。槌、鉤、蹄鉄、それぞれが頻繁なる用ひの鈍き輝きにて擦られ候。別の小路にて、古き傘は戸口に忘れられて凭れ、布はあまりに多くの嵐より皺み候。上にて、空は近くに留まり、港の上に強情に伏す朝霧の色に候。

歴史の大いなる町、雨の後の倫敦、暁の前の静けさの中の東京は、これらの日を知り候き。街路が厚く低き雲に覆はれ、煙突の煙が路地に沿ひて漂ひ、塔と寺のあひだを縫ふときに候。田舎にて、羊は地衣の斑なる岩の近くに庇を求め、石は世紀を越えて集められ、数へ切れぬ冷き暁の記憶を抱き候。水夫はかつて、遠き船よりの煙の着実なる色を来たる天候の印と信じ、地平の上の巻きと伸びの中に物語を読み候き。地下の鉱夫は黒鉛のほのかなる光にて働き、日光の達し得ざるとき粗き石に線を辿り、影の工房にて鍛へられたる槌と鑿を信じ候き。

厨にて、鋳鉄の鍋は竈の上に休み候。面は年々の丁寧なる世話にて味を帯び、次の食を引き受くる用意に候。静かなる隅にて、古き日記は待ち、表紙は柔らかく擦られ、頁は遠き山と気むづかしき海の素描にて満たされ候。市の込みの中にても、銭は手より手へ渡り、涼しく固く、現在の外の場と時の印を帯び候。世界はこの空の下に足を止め、動きは自らの追求と成り、見慣れたる街区を巡る戦車の如く方向を失ひ候。されども執念に候。

今日、誰かは道具を研ぎ、用ひにて鈍くなりたるものを世話するを選ぶもよく候。あるいは近隣の地図を描き、常に家を巡る道を辿るもよく候。別の者は水の鍋を沸かすに置き、最初の遅き泡に耳を澄ますもよく候。あるいはただ重き雲の下を歩き、自らの息を、石畳に当たる靴の着実なる拍子に合はせるもよく候。

今日の色は薄墨に御座候。
Lucky Color: DimGray — #696969石の辛抱と雨の約を運び、動きは時に自らの到着に候。

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