石は静かにて屈せず、その面は幾千の夜明けによりて形づくられ候。皇帝は、山の骨より彫りし座に坐し、高く動かざる空の下に候。周りには、丁寧なる手の漆喰にて固めし境の壁ありて、落ち着かぬ地を馴らし候。石は一つ一つ正方形に切られ、継ぎ目は一つ一つ手順にて据ゑられ候。これぞ世の秩序に御座候。王はさ迷はず、自らの場所を領し、それを永らえさせ候。手前には厚き敷物の広げられ、遠き帝国より商人の持ち来たりし異国の模様にて重く候。糸は規律ある指の労にて結ばれ、表面の模様は、硬き日の下にて川の乾く土地のことを語り候。
その敷物の向ふ、低き卓の上には香料の葡萄酒の杯が丁寧に置かれ候。葡萄酒は秋の収穫のものにて、深き窖にて熟し、打出しの金属の器にて家の主へ注がれ候。土と果実の香にて空気を満たし、年より年へと運ばるる秩序の約束に御座候。傍らには石榴の種の鉢が光り、粒の一つ一つは小さき輝く境にて汁を内に保ち、自らの限を守ることを学びたるが如くに候。皇帝は測りたる仕草にて食し、種を一つ噛みてより傍らへ置き候。食卓の規律は、壁の規律を映し候。
廷の外にて、茜の根の畑は、列を守る働き人によりて世話され、古き掟にて草を抜き、水を注ぎ候。この根は土より引かれ、染屋の区にて大なる鉄鍋に煮られ候。その香は下なる街を漂ひ、濠の向ふへ出でて、山の空気の清き匂ひと混じり候。染屋の手より出づる布は、諸国にて貴ばれ、騎士は旗のために、祭司は祭壇の帷のためにこれを求め候。かつてこの染の秘は錠の掛りし扉の内に守られ候き。今は力と安定の印、都を結ぶ商ひ、法と習ひの織物を貫く糸に御座候。
都の門の影にて、商人は東方の道よりの絹を繰り候。その中に、乾きし血の色の一反ありて、銭と塩とにて交易され候。これは裁たれ、縫はれて評定の衣と成り、祭の日と、条約の署さるるときに着られ候。皇帝の広間にて、この衣は香柏の櫃の中に備はりて掛り、その襞は集められし権威の静なる証に御座候。嵐の雲の下、風が胸壁を磨き、雨が冷き石を筋に染めむときにも、この衣は出され候。通過の式のために着られ、争ひの終わりを印し、秩序の保たるる約束を封じ候。
皇帝に代はりて歩まむと願ふ者は、模様ある布を卓に敷き、石榴の種の鉢を置き候。強き葡萄酒に浸しし筆にて、その日の意図を書き、あるいは茜の根を浸して古き土の力を取り候。争ひの起これば、家を常に形づくりし掟を唱へ、繰り返しの一つ一つが道を守る境なることを知り候。
今日の色は深紅に御座候。
Lucky Color: Crimson — #DC143C秩序は、定まりしものより育ち候。