果樹園の陰にて、女帝は、野生の草が整ひたる小麦の畝と、辿る蔓とへ譲るところに坐し候。薔薇の房は低き垣を縫ひ、花弁は石の道の上へ落ち候。女帝の下の席は梨の木より彫られ、季節にて滑らかに擦られ、苔に覆はれたる岩の上へ注ぐ定まりたる滝の傍らに据ゑられ候。ここは不足の場所には御座なく、すでに実現したる満ちの場所に候。熟れたる果実の籠は足元に休み、あまりに柔らかき桃にて溢れ、その毛は朝の露を捉へ、竈よりなほ暖き麺麭の塊はそれらの隣に横たはり、皮は約にて割れ開き候。空気は焼くことと熟ることとの香りにて厚く、果樹園と炉との混じりに候。
この庭の心にて、豊かさは静けき合唱に候。桃の木は、赤らむ収穫にて重く、代々ここに立ち候き。幹は夏の塵にて塗られ、根は近くの流れより深く飲み候。日の柔らかく低きとき、厨の窓は砂糖煮より巻く湯気にて輝き候。瓶は棚に沿ひて並び、各は七月の午後の記憶を抱き候。歴史家の物語は、遠き市の商人が桃を麻布に包み、甘みを山の向こうへ運びしこと、そして古き田舎の厨にて、その果肉が菓子の生地へ折り込まれ、層の皮の雲が飢えたる手を迎へるまで焼かれしことを語り候。
この場面の光はやはらかく、夏に子どもを着せし布、肌の上に透きて柔らかく紡がれ、最も香るときの果実の色を捉へたる布より縫はれたる、細き帳を通じて濾され候。これらの帳は風と共に動き、庭の静けさと蜂の遠き唸りとを入れ、家の内に真昼の日光のやはらかき味を生かし保ち候。庭の縁の滝は祝福にて、その飛沫は葉を涼しくし、鳥のために出されたる石の鉢を洗ひ候。庭の天気にて、急がるるものは御座なく候。朝は暖き静けさとして開け、空自らが淡く屈する帳に包まれたるが如くに候。
豊かさは、ここにて大声には御座なく候。単純なる身振りにて自らを明かし候。牛酪を塗りたる麺麭の一切れの頂に置かれたる桃の切れ、空気の入るまで泡立てたる乳菓子の鉢に果実を載せたるもの、夏の砂糖煮の皿の下に卓へ敷かれたる柔らかき布に候。女帝はこれらのものを、見せるためには集めず、これを世話することが良く生きる日ごとの技なるゆゑに集め候。他の者を加はり、味はひ、甘みと休息とを生み出す労に慰めを取るやう、招き候。
今日、人は桃を蜂蜜と共に煮、朝餐の上へ匙にて置くも候。あるいは窓を開き、焼く麺麭の香りが午後へ漂ふやうにするも候。ある者は新しき布を折り、切られたる薔薇の瓶の下に置くも候。あるいは桃の木の下を歩き、柔らかき風に、果樹園の静けさを手の中へ運ばせるも候。
今日の色は桃に御座候。
Lucky Color: PeachPuff — #FFDAB9すでに手の内なるものに、豊かさは御座候。