牌のさすらい人は、足を縁の上に構へ、下の世の未だ示されざる瞬間に捉へられ候。背負ひ袋は解かれ、犬は踝を引き、最初の一歩は霧の中へ落つる危きを持ち候。地がなほ秘事を息し、気の定かならず、自信は安全に非ず、歩みの下に何かが形を成さんといふ望みに包まれたるままになさるる跳躍に候。この逆位にては、旅人の軽さは一種の滑りとなり、急ぎたる横断にて、下の地は知られず、推測さるるのみに候。
世の、巻きたる帳の後ろに隠るる朝の御座候。村の屋根と遠き丘とは、早き炉より昇る漂ひに失はれ候。焚き付けに火の入れば、煙突よりの薄き霞は庭と路地との上に穏やかなる穹を成し、あらゆる輪郭を和らげ候。人はこの空模様の中へ踏み出で、息は巻きたるものに加はり、先の路は曖昧にて、一歩ごとに信の業に候。高き峠にては、同じ一筋が冷き夜の後に斜面より巻き、日がそれを集め去るまで谷を満たし候。鉄道の者はかつて、車庫の戸よりこれらの徴を見、漂ひを信号の断つを待ちてより、朝の列車を出し候き。
古き厨にて、煮えたつべく残されたる鍋は、微かなる筋を上げて気を印し、蓋の上がる前さへ、成りつつある食事を告げ候。焙る者の窯もまた、静かな徴を与へ候。麺麭の一窯より昇る、変はりの証拠、途にありて未だ触れ得ざるものに候。僧院にて、香炉の煙は身廊を螺旋に進み、石と衣とを撫で、見えざるものを微かなる存在にて印し候。一と息の信号にて、何を後にし、何へ近づくかを正確には知らずして、一つの瞬間より次へ渡ることに候。
かつて戦場の使者は、旗を用ひて小康を示し、突撃の前の短き平和を、味方にも敵にも読み得る徴として上げ候き。山の村にては、夜明け前の隣人の炉よりの最初の一筋は、日の始まれること、誰かが定かならざる朝へ飛び込みたることを示し候き。空模様の伝承にて、細く浮かぶ漂ひは穏やかさを予告し、また隠れたる窪みと見えざる氷とを警告し候き。馴染みの路を定かならざるものにし得る屍衣に候。
跳躍をためらふさすらい人のために、地に足のつきたる軽さを引き受くる道の御座候。米あるいは乳を穏やかに煮て、微かなる筋の厨に昇るまで待ち、温かさの貴殿を安んずるに任せ候へ。気の新たに帳を掛けたる夜明けに外へ歩み、世の現るるにつれ、足に路を見いださせ候へ。窓の近くにて香の一本に火をともし、その告げの漂ひ出でて去るに任せ、小さき始まりの徴を世へ向け候へ。愛でたる亜麻の布を洗ひ、朝の気を捉へ得るところへ掛け、家と、次に来たるものとの閾を印し候へ。
今日の色は煙白に御座候。
Lucky Color: WhiteSmoke — #F5F5F5形を成し、かつ褪する徴を信じ、小さき業ごとに穏やかなる跳躍を印し候。