吊られ人の牌が半ば転じて出づるとき、世は男の踝を引き、かなはざるときに動きを求め候。男は川岸の上に、樹の節くれ立ちたる根より片足にて吊られ候。下の流れは海へ急ぎ候へども、男は捕らはれたるまま候。男の世は委ねの世には御座なく、拒絶の世に候。体は逃げたきに候へども、枝は確として抱き、下なる川は海への旅を休まむとせず候。この吊されたる時にて、心は藻掻き、新しき位置に休むことを肯んぜず、真の動きの前に来る沈黙に抗ひ候。遠くにて嵐は集まり、空気は近く重く、星なき空を約束し候。その色は黒に御座候。
かかる天候は野と小道を押し候。雷雲は地平に積み、遠き丘を消し候。雲は自らを壁へ築き、硬く屈せず、風はそれらの到着の前に死に候。この待ちにて、農夫は戸と窓を閉ぢ、旅人は低き石橋の下に庇ひを探し候。閾に立ち、人は世の褪せるを見候。樹は影絵と成り、見慣れたる道は無へ解け候。嵐の帳の近づきにて消されし世に候。
歴史は、市の燈の絶え、通りが沈黙に満ち、急ぐ足の音のみに中断されし夜を記し候。人は雨戸を閉ぢ、厚き帳を引き、黄昏の最後の跡を呑む部屋へ自らを閉ぢ候き。そこで仕事と休息の道具は集まり候。年月の使用にてまだらの鋳鉄の藥罐は、熾火の上にて自らを温め候。石の臼は掌に重く、香草を粉へ押し候。天鵞絨の一筋は厨の椅子の背に投げられ、手のそれを形へ撫づるを待ち候。戸棚にて、甘草の根と、焙りたる種の屈せざる殻は、強情と持続とを舌に思ひ出だし候。
これらの壁の向こう、火山の野は冷ゆる灰の重みの下に休耕し候。ここで種は季節のあひだ眠り、地の抱擁に鎖され、雨と日がそれらを見出す瞬間を待ち候。これらの地を過ぐる旅人は、足元の黒曜の破片を語り候。過去の時代よりの鋭き断片にて、創造がしばしば破壊の後に続く思ひ出に候。朝、鴉は地の裸なるところに集まり、翼は止まれる景色の上に弧を切り候。隠れたるもの、昇る機会を表面の下に待つものへ引かれ候。
神話にて、英雄が降りねばならぬ瞬間が御座候。洞窟へ、黄泉へ、敗北の後の不確かなる沈黙へ候。彼らの旅は忍耐と、聞く心とを求め候。されどこの牌の半ば転じたる状態にて、教へは拒まれ候。降下は牢と成り、沈黙は苦しみと成り候。自由にならむとする試みごとに重くなる流刑に候。世は前への道を供へず、待ちの挑戦と、待ちが何を生むかを知らぬ恐怖とのみを供へ候。
今日、貴殿は嵐の到着の前に雨戸を閉ぢ、集まり来る沈黙をしばし外に保ち候へ。古き藥罐の表面へ掌を走らせ、火の燃え尽きし後も長く滞る熱を感じ候へ。根と種を手にて碾くことを考へ、着実なる重みが、世の求める忍耐を貴殿の思ひへ教ふるに任せ候へ。あるいはただ静かに坐り、遠き雷を聞き、ある待ちは長く候へども目的なくには御座なく候といふ知の中に、自らを休ませることを許され候へ。
今日の色は黒に御座候。
Lucky Color: Black — #000000静けさは深き形を持ち、今夜の庇ひと忍耐は貴殿の味方に御座候。