牌の上にて、吊られ人の足は鎌の形に組み、木の梁より片足にて吊され候。されど男の世は休らむとせず候。頭を下へ向けて下がり、吊されたることが洞察を生むを待つやうに候へども、瞬間は決して熟せず候。かつて男の静けさを考へむとて集まりし群衆は散り、空気は急なる雨の後の土の香りにて落ち着かず候。高地の谷を筋に走り、すべての沈黙を掃ひ去る類の雨に候。世が駆け過ぎ、自らの四肢が抗議に痛むあひだ、男は固く抱き、停止の求めるものへ屈し得ず候。森にて、絞め殺す無花果は宿主に絡み候。殺すためには御座なく、止め、より緩く深き何かを樹に目撃させむとて候。されど願ひは拒まれ、育ちは抗ひの如く捻れ候。
昔、船は大西洋を越ゆるあひだ、選ばざる運命を強ひられて、荷の下に呻き候き。鉄に富む粘土の脈打つ山の影にて、共同体は成り候き。逃れるとは法の外に生き、雷と血の鉄の味とに厚い夜を耐へることに候き。これらの集落は、生に課されし停止を受け入れぬ者により建てられ、逃げる行ひ、圧へられを拒む行ひより名を得候き。彼らの調理の火は重き鍋の下に燃え、石榴の種、月桂の葉、野獣の肉を緩く煮込みし濃き煮込にて泡立ち候。食事は、流謫の者が再び動く前に敢へて待つ限り、煮え候き。その濃さは臙脂に御座候。
祭の日、かつて塩と煙草と引き換へられし一反の絹は、卓の上に引かれ候。布は重く、遠き市と機の遅き仕事の記憶を通され候。食物の染みは決して全くは去らず候へども、物語もまた去らず候。ある夜、雨が横に降り、川に岸を登ることを強ひしといふ、女の声の語り直しに候。あるいは、決して破れざるやうに見ゆる嵐の、金属の香りにて空が時に満ちるといふ語りに候。すべて約束にて、解放はなく候。
静かなる家にて、棗椰子の鉢は脇卓に坐し候。皮は皺寄り候へども果肉は柔らかく、乾き風と容赦なき日の記憶を運び候。鉢は土にて、ある日には空気が厚くなり、収穫のほどけるを味はひ得ると、父がかつて語りし陶工の形作りしものに候。半ば転じたる吊られ人は、これを理解し候き。屈することを拒み、世が清算を強ふるときにも押し進むことに費やされし生に候。
一日が落ち着かず感じらるるならば、貴殿は石榴を一欠片切り、その種が指を染むるに任せ、あるいは煮込を緩く煮、香りが家を満たすに任せ候へ。絹の布を広げ、それが抱く物語を一つ書き、あるいは棗椰子とともに坐り、その甘さが忍耐を思ひ出だすに任せ候へ。雷の午後、土の鉢を拭ひ浄め、止まることを貴殿がなし得ぬときにも前へ運び得る、手の中の仕事を感じ候へ。
今日の色は臙脂に御座候。
Lucky Color: Maroon — #800000天候は破れ候へども道は続き、動きと記憶のあひだを保ち候。