Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 月

月の幽白。中央の鏡に色が映る絵

幽白

正位 · #F8F8FF

夜の定かならぬ縁の下にて、世界は半ばのみ理解せらるるものに満ち候。月そのものは、失はれたるものと見出されたるものとの狭き縫ひ目を歩み、上りたる潮の上に煌めき、二人の見守る者を引き出し候。一方は飼はれ、一方は野生に御座候。古き石の塔の間にて、露が草を覆ひ、薄き霧が地の低くに休み、道を近くも届かぬやうにも見せ候。夜の気は涼しく、塩と土との微かなる匂ひを持ち、遥かに上にて月の顔は帳に御座候。決して十分には示さず、決して十分には隠さず候。その帳の色は幽白に御座候。

犬の息は冷気の中に白く曇り、狼の足は川岸の斑なる砂を擦り候。両者は静かに動き、この半ば照らされた道を追ふ旅人の護りか、挑む者か、自らも定かならず候。岸に当たる水の音は穏かにして執拗にて、子守歌か警告かに御座候。昼の光に隠れたる貝は、今は水の縁の近くにて柔らかく光り候。塔は古くして沈黙し、口にせぬ秘事の証人として立ち、その石は温もりに触れられず、窓は見てなほ見ず候。

神話にて、この時刻は物の怪の刻と呼ばれ、境は薄くなり、世界は聴きたくもなき答を聴き候。近き家は平安を保ち候。静かな卓の上に敷きたる亜麻の布、開けたる夜に対して引きたる帷、朝の乳に備へて置きたる陶の鉢に御座候。それぞれが月の霞を受け、古き木と石との周りの静けさとして返し候。遠き土地にて、霧が荒野と湿地の上へ垂れ、生垣と低き壁とを物の怪に変へ候。船人はそれが港を横切って転がるを見、海を平らにし、岸壁に沿ふ灯を鈍らせ候。夜明け前の、緩く沈黙せる先触れに御座候。

絵師の仕事場にて、用ゐず残したる絹の切れは、一度も着られぬ衣、あるいは一度も上げられぬ婚礼の面紗を示し候。深夜の湿りに掃かれたる人気なき路は、誰かが目覚める前に消える足跡を示し候。ある国にて、これは物の怪の果樹の咲く時刻に御座候。枝は露に重く、ほとんど実在せぬやうに見ゆる花弁を抱き、その香は記憶と夢との間に捕はれ候。孤りの旅人は押し進み、路傍の蝸牛の殻の微光、あるいは遠く霜を戴きたる柵の柱の閃きを追ひ候。

これらは月の領域の瞬間と物とにて、馴染みなるものは少し異様に、異様なるものは辛うじて馴染みに御座候。かかる夜、人は杉の櫃に保ちたる古き家族の文を探し、窓の光にて読むために並べ、あるいは網の帷を窓に掛けて外の世界を和らぐることも候。今日の杯を洗ひ、静けさの中に伏せて乾かすべく残すときも、あるいは戸外へ踏み出して、朝の最初の霧が草の上を漂ひ、光が先の道を顕はすを待つときも候。

今日の色は幽白に御座候。
Lucky Color: GhostWhite — #F8F8FF幽白の帳を今しばし留め、半ば示す光の道を辿り候。

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