二つの塔の間にて、道は見えるものの縁に沿ひて巻かれ候。道は半分は霧に包まれ、半分は灯の薄き光に顕はされ候。潮は砂の上に光る線を引き、退きて絡まりたる湿地の中へ煌めき候。犬の耳は、遠き寄せ波の音に立ち候。狼は野生の目にて、道の遠き曲りのところに立ち、馴染みもあり知らぬもある世界の呼びを聴き候。
神話は露のごとく、繊細にして定かならず、ここに集まり候。海の近き古き塩の道にて、旅する者は稀なる鉱物の話を語り候き。労働に染みたる手が細き粉に碾き、夜明けに崖の影を篩ひ候。この鉱物は、古の硝子吹きの時代より珍重され、不定の夜を通じて心を定むると言はれ候き。月の半ばの光の中にて、これは麺麭の生地の上に撒かれ、着かぬやうにせられ候。石鹸へ混ぜられ、肌より疲労の跡を持ち上げ候き。船人はこれを小さき帆布の袋へ収め、灯台の光の瞬き、羅針の針の疑ひにて震ふとき、霧の渡りにて自らを護ることを望みて候き。その粉の色は粉青に御座候。
岸を遠く、高き土地の朝は、雨の後まで居残る空の下に開くことも候。気は洗はれて静かに御座候。かかる土地の古き者は、春の洪水を記憶し候。川の氷が砕かれ渦巻き、岸に沿ひて滓を残し候き。夜明け、これらの堆積は最も早き光を受け、内より光るやうに見え候。先の道は、十分には見えずとも可能なることの、穏かな約束に御座候。交易の上に建つ町にて、衣を商ふ者はかつて同じ粉にて最も細き薄木綿を染め、洗礼の頭巾と祭の紐とに用ゐ候き。若き母は揺籃にこれを敷き、子の夢を和らぐると信じ候き。欧羅巴にては、ある天候が草原より吹き込み、細き霞が窓の敷居に降り、触るるすべての輪郭を和らげ候き。
家の内にて、誰かが擦り減りたる厨の卓に坐り、釉の掛かった瓶の中の水を攪拌り候。上の棚にて、瓶が今年の最後の干したる菫を保ち、糊の粉の層の間に押され候。気は潮の香を運び、微かにして執拗にて、聴く者に狼の慕ひとも犬の忠ともを思ひ出させ候。かかる瞬間、唯一の確実は足下の道にて、塔がもう一夜を立ち通すことの知りにて、潮が失はれたるものを岸へ戻す望に御座候。
今日、貴殿は忍耐の手にて生地を捏ね、粉を指の間より零すもよしと存じ候。夜明けに歩き、川霧の道の上に漂ふところにて停まり、沈黙をして自らを定まらせ候へ。あるいは窓を少し開きて朝の気を入れ、洗ひたる石を机の上に置き、潮の運びて取り去るものを思ひ出となし候へ。
今日の色は粉青に御座候。
Lucky Color: PowderBlue — #B0E0E6半ば見えるものの輪郭を辿る慰めのうち、朝の空の静かな約束が貴殿の歩みを導き候。