Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 塔

塔の古白。中央の鏡に色が映る絵

古白

逆位 · #FAEBD7

雷は空を裂き候へども、塔は保ち候。最も高き窓にて、火には御座なく煙が漂ひ出で候。下の石は焦げ候へどもなほ積まれ候。時は落ち着かざる間へ躓き候。災は来り候へども、未だ来らず候。壁のひびは、旧き焼成の灰泥の塵にて詰められ候。屋根裏に忘れられたる帳の畳み、或は捨てられたる舞踏の間の漆喰の型の溝に集まる種類に候。かつてここに宴が御座候き。天井の瓦は古き骨磁の光にて瞬き、触れれば常に冷たく候き。卓布は厚くして重く、幾代の零れたる葡萄酒と投げられたる麺麭とに堪へる経糸と緯糸とを知る手にて織られ候き。

庭にて、光は粉の如く篩ひ下り、空気を厚くし候。嵐の後の遅き朝に候。草は湿り候へども、床几は乾き、木蓮の厚き梢にて護られ候。砂利の歩みに沿ひ、半ば廃れたる鶏舎の雌鶏の卵の殻が日に光り、崩れの影の中に続きたる静けき日課の思ひ出に候。風は台所にて脹る甘き麺麭の微かなる香を放ち候。台所の瓦が足の下に緩むときにも、誰かはなほ焼き候。

庭の壁の先、風景は白亜の丘へ暈け、丘は羊と幾世の風とにて刻まれ候。これらは、商人のかつて重い車にて旅したる同じ畑に候。車輪は生の亜麻と象牙の石鹼の荷の下に軋み候き。村人は川にて亜麻布を洗ひ、乾かさんとて草の上に敷き、布は微かなる風の中に帆の如く膨らみ候き。最も柔らかき布、幾年の擦りにて薄くされたるものは、今は子どもが茸を集むる籃を裏打ちし、茎に着く粉の被ひを乱さざるやうに注意し候。

神話はこの場所に集まり、隅の塵の如く執拗に候。最も古き話は言ひ候。落ちたる後、塔の骨はその形を覚え候。消え去りたる海の圧力を石灰岩が覚えるやうに候。季節にはあまりに柔らかき天候と、息を止めたるが如き雷の後の静けさとを語り候。これらの瞬間、崩れは最も小さき行ひにて遅らさるるやうに候。祖母の手が塊のための粉を篩ふこと、大工が五つの家を通して伝へられたる衣櫃の柄を据ゑ直すこと、園丁が埋められたる蝸牛の殻より砂を払ふことが御座候。

今日、瓦礫はなほ塔と呼ばれ候。その影は空に対して残り、幾年の煙と蝋の脂、話の緩き堆積と砂糖の散りたる粒とにて柔らかく威厳あり候。内にて、安全の記憶は堪へ候。盾には御座なく、継布団にて、繕はれて褪せ、堪へる者の肩に巻かれ候。災は否まれず候。延ばされ候。世界はなほ、旧き亜麻布の糸と、杯の釉と、日の光の床板に溜まるやうとにて、まとまり得るかの如く候。

貴殿は古きやうにて、幾十年も塊を覆ひたる亜麻布の下に麺麭を脹らせ候。屋根裏の櫃を開き、骨磁の断片を磨き、確かな指にて髪の如き脈を辿り候。褪せたる卓布を畳みて卓に敷き、次いで窓の傍に坐り、柔らかき光の手に沈むを任せ候。或は雨の後の庭を歩き、最も柔らかき家の布にて裏打ちしたる籃に卵を集め、朝を急がず候。

今日の色は古白に御座候。
Lucky Color: AntiqueWhite — #FAEBD7古き形をもうしばし保たせ、間にて堪への形を見出し候。

塔へ戻る