Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 塔

塔の赤橙。中央の鏡に色が映る絵

赤橙

正位 · #FF4500

一筋の落雷が空を彫り、雷鳴の叫びにて夜を裂き候。石は戦き、かつて高くして静かにてありしものが倒れ始め候。塔の頂には小冠が坐り候き。今は投げ落とされ、空にてあることが皆に見え候。光は巻きたる階段と隠れたる室を満たし、闇に積まれたる秘事を散らし候。鎖されたるものが知られんことを求める時刻にて、外の世界は破れ目へ駆け込み候。

ここに、塔が果樹園と埃の道の上に起つ古き都にて、その先の畑は秋の収穫にて炎の如く候。日の低く傾く地にて、林は実にて溢れ、風に揺るる千の灯籠の如く候。柿は裸の枝に着き、その皮は夕の最後の光に照らされ候。人はそれを藁の籃と土の鉢に集め、指の粗さは雨の記憶を払ひ候。市にて、唐辛子は紐に干され、崩れかけたる石の竈より漂ふ煙の中にて、緩やかに巻かれ候。各々の莢は内に熱き火花を抱き、警告と約とに御座候。

廃れたる塔の麓にて、地には断片が散り候。陶器の破片と、古き窯よりの熾の筋の残る煉瓦とが御座候。窯の神話にて、ここにて粘土は炎に変へられ候。かつて柔らかくして黙せしものは、打たるるとき響くものと成り候。陶工は戸の閉ぢたるとき内を見ず候。熱が、いかなる形と、いかなるひびと、いかなる焦げとを内に顕はすかを信ずるのみに候。窯の開かるるとき、真実は湯気と共に溢れ候。

幾世を通じて、旅人は日の沈むとき空気の揺らめく砂漠を越え候き。その時刻、地平は燃え、風は都の端に咲く鳳凰木より塵と散りたる花弁とを運び候。時に雷は雲の中を叉に分かれ、雨は焦げる石に会ひて息を吐き候。季節風は静けさを破り、落ちねばならぬものを運び下し候。台所にて、同じ力は竈の上の揺らめきに捉へられ候。一本の唐辛子が鍋に落とされ、その鋭さを放ちて空気を澄まし、舌を覚まし候。

話は絹の道の商人を語り候。その隊商は沈む日の熱を追ひ、荷物には、かつて塔の麓にて破れたる甕を満たしたる香料が入り候き。番紅花の糸は稀にて貴く、戦く手にて量られ、甕の開かるる度に香は塵と共に上り候き。隠されたるものが遠く旅し、変はりの息に運ばるる徴に御座候。

今、旧き冠は敷石の上に横たはり、壁は旧き秘事を吐き候。現在は台所か山腹かに、徴を待ち候。ある人は黄昏に柿を採り、割りて、落ちたる後にも残りたる甘さを味はひ候。ある人は乾きたる唐辛子を臼と杵にて碾き、内に鎖されたる火を放ち、或は炉を掃きて窯の教へを思ひ出し候。破れを経てのみ、真の形は現はれ候。旅人は嵐の雲の集まる地平を見て、外へ踏み出すことを敢へてし、空気の移ると世界の転ずるとを感じ候。

今日の色は赤橙に御座候。
Lucky Color: OrangeRed — #FF4500闇の閃き、手の中の実、遂に開く戸が御座候。

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