Colors for the Fool

今日の色を、牌より引く

牌を引く / 塔

塔の石鼠。中央の鏡に色が映る絵

石鼠

正位 · #708090

長く覚えらるる夜が御座候。空は一筋の閃きにて裂かれ、塔はその高みに孤立して立ち候。古き斜面より切り出されたる石塊は、幾世の天候と戦とに堪へ候き。されど今夜は異なり候。雷は地を揺らし候。落雷は最も高き胸壁の冠を剥ぎ、壁を引き裂き、断片を下の棚へ転げ落とし候。内に保たれたるもの、秘事と誇りと傷つきやすき心は、冷たく守られざる闇へこぼれ候。

この夜、塔の周りの地は石板の一続きにて、鉱夫がかつて屋根石と硯とを掘りたる尾根に候。手は夜の明けるときに労し、風は露はれたる岩を磨き清め候き。塔の下、地には削りたる断片が散り、破れたる約の破片の如く候。鉱夫の道具は斜面に寄り候。半ば割れたる片の傍に残されたる鑿、仕事の記憶にて暗き槌、丁寧なる手にて滑らかにされたる砥石が御座候。崩れは古き交易に響き候。すべての石板の屋根は、かつて危きと決意とにて地より起てられ候き。塔もまた、何かが嵐に対して立ち得るといふ信念の上に築かれ候き。

他のところ、遠き都の台所の卓にて、書く女は石板の敷の上に杯を置き、雨の窓を叩くを聞き候。女は山の石切場と、黄昏に髪に塵を入れて家へ歩きたる男女とを思ひ候。机の上、紙切の小刀が書かれざる控への山の傍に横たはり、その柄は塔の壁と同じ石より彫られ候。女はそれを掌の中にて返し、冷たく均一なる重みを感じ候。圧力にて形づくられたるものは、割れざるには御座なく候へども、頼み得候。都の屋根は重なりたる瓦にて護られ、嵐を待ち候。その下にて人は炉の周りに集まり、鍋を攪き、蝋燭を点じ、動揺と更新との話を囁き候。

雷が夜を裂くとき、旅人は古き道に沿ふ石板の張り出しの下に庇を求め候。空気は満ち、最初の重き滴が落ち、棚より跳ね候。旅人は冷えたる石に手を押し、顔は一瞬、空の猛き眩しさに照らされ候。山の棚は庇と露呈との両方にて、石の強さは堪へたるものにて証せらると知り候。後にて、世界は雨と潰されたる地衣の香を放ち候。生きたる岩は、緩やかに辛抱して水を吸ひ候。

今日、ある人は庭の一区画を空け、平らなる川石を敷きて道を作り、石切場と築きたる者とを思ひ出し候。ある人は滑らかなる面の上に手紙を書き、筆を絶えず動かし、堪へたるものへ文を刻むかの如く候。嵐の夕、古き山より切り出されたる鍋敷の上に薬缶を置き、屋根の固く保つあひだ雨を聞き候。土砂降りの後に外へ出で、路傍より小さき石を集め候。落ちたるものは再び集め得るといふ、懐一杯の思ひ出に候。

今日の色は石鼠に御座候。
Lucky Color: SlateGray — #708090天候に堪へ、隠れたるものに息をさせ候。

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