世界の牌の楕円の花環は門にて、月桂は内へ巻かれ、全くは閉ぢず候。逆位にて、それは未完のまま掛かり、拱は口を開けたるまま、綬は解かれ、内の人は舞の最後の一歩と下の床のあひだに構へ候。最後の結びの結ばるる直前、手は離れ、環は封じられず、旧き旅は縁に残り候。ここにて牌の沈黙の音楽は凱旋には御座なく、あと一歩、終はらざるもの、半ば覚えられたる跡、閾に停まりたる巡礼の靴に候。
古き物語にて、旅の終わりはしばしば深き森の鎮まりたる冠の下に見出だされ、落葉は一歩ごとに足取りを軟らかくし、幹は古き柱の如く立ち候き。そこにて人は跪き、掌を地そのものへ押し、昨年の葉の涼しく崩れやすき層が、湿りたる腐植と混じるを感じ候き。その従ふ土の中、種は隠れ、根は捻れ候き。地は単なる最後の休み場所には御座なく、保つ空間、再生の前の間にて、世そのものが一息のために繁りを遅らすが如くに候。その土の色は茶に御座候。
逆位の世界は、収穫の後の畑に響き候。株は土を突き、空気は刈りたる小麦の香にて重く、空の麻袋は納屋の扉の傍に崩れ候。それらの袋は粗く縫はれ、かつて穀と豆の重みを運び、今は緩く待ち候。その布は古き交易の町にて黄麻あるいは麻より織られ、褪せる光の中、糸は過ぎたる仕事、解かれ候へども未だ再び始まらざる巡りを語るが如くに候。一年の労働の終はらざる用事はそれらに着き、側面は、敗れには御座なく先取りにて、手の離れたるところに皺を寄せ候。
牛の跡は牧場を、全くは閉ぢざる螺旋に図し、泥の道は蹄に踏まれ、干し草の香に印され候。獣は垣にて間を置き、門にて怠り、渡るべきにあらざる境を案ずるが如くに候。嵐の日、空気は湿りたる皮の香と泥炭の鋭さを運び、雲は丘の上に低く集まり、破れ開かず、黄昏まで雨の約を保ち候。内の爐は静かに輝き、爐石の傍に積まれたる丸太に養はれ、熾は温みと休息のために伐られたる森の記憶にて脈打ち候。厨の珈琲の香、濃く強く煎られ、いづれの角へも滲み、終はらざる時の慰めに候。
逆位の花環は、手の緩き仕事の中にも見出だされ候。板の上に半ば形づくられたる麺麭、粉を振はれ、あるいは庭の土の塚の上に休まる鋤の柄、未だ集められざる馬鈴薯の桶の傍に候。誰かは羊毛の上衣を椅子の腕へ畳み、裏はなほ昨秋の畑の香を保ち候。いづれの品にも、労働の跡は残り候。革囊の古き革の当て、巻かれ候へども切られざる麻紐の長さ、朝の日の戻るとき終へらるるを待つ、半ば刻まれたる木の匙に候。
今日、人は森の道を歩き、掌を壌土へ押し、行ひの前の間に自らを据ゑ候。根菜の簡素なる食事を煮、牌の住まふ場所を思ひ出させる土の味を味はひ候。風化したる卓の傍に坐り、袋を繕ひ、あるいは靴の一足を磨き、巡りが未完に見ゆるときにも仕事の継続を尊び候。あるいは耕されたる畑に雨の降り始むるを見、次の目的を待つ地の静かなる忍耐を感じ候。
今日の色は茶に御座候。
Lucky Color: Brown — #A52A2A忍耐は終わらざる環の贈り物にて、根と雨は結びをともに待ち候。