かつて小麦と芥子と野生の菊苣とにて茂りし野は、今、嵐の後に絡みて重く横たはり候。女帝の領地を印しし石垣は、攀ぢて手入れされぬ蔓の重さの下に傾き、葉は濃く込み、下の光を消し候。果樹園の古き木は、かつて熟るる果実を負ひしものが、今は萎みたる橄欖を去年の葉の中へ落とし、落ちたるところに酸ぱく成るに任され候。女帝の庭は空には御座なく候へども、その賜物はもはや、待つ手へ自由には来ず候。
古き国にて、かかる林は低き斜面を縁取り、各の木は幾十年の風にて捩れ、各の根は土の記憶の深くへ押し候。その実はかつて、灯の油のため、塗油のため、単純なる食事のために圧され候き。今、疎かさに圧され、実は厚くなり皺み、手の届かぬまま、分たれぬ収穫に候。村の碾き場は、石の輪のかつて耐心にて回りしところ、黙し候。木の陰にて、軍の外套は縁側の椅子の上に掛けられ候。擦り切れ、用にて強められ、縫ひ目に地と薪の煙との香りが纏はり候。これらは残る者の装ひにて、機械の雨に錆びたる後、手にて地を働く者のものに候。
庇ひが、かつて迎へられしものが、息苦しく成り得る季節に候。厨にて、納戸の棚は塩水の瓶にて縁取られ、橄欖は浮かび、滑らかなる皮は塩水の幾月にて曇り候。これらの瓶は、夏の味を冬へ運ぶためのものに候き。されど今は開かれぬまま坐し、食欲の退くとき塵を集め候。午後の淡き光は帳を斜めに通り、去年の油の曇りて厚くなる金属の缶を捉へ候。卓は、保つことの道具にて散らかり候。木の圧搾、擦りたる剪定の刀、枝を結ぶための縄の巻きに候。あまり用を見ず候。
物語はこれらの道具のあひだに残り候。長き雨のあひだ、年長者は乏しき年を思ひ出し、兵が丘を動き、その制服は林と同じ色調にて、土地に溶け候き。静かに動き、灌木と耕されたる列とに向かひてほとんど見えず、雨と朝の霧との中へ消え候き。土地そのものが彼らを呑むやうに見え、庇ひ、あるいはおそらく固く保ち候き。
外にて、空気は来たる嵐の約にて湿り候。木のあひだの道は足元に柔らかく、草は厚く絡み、石と半ば埋もれたる熊手とを隠し候。陰にて、空気は涼しく重く、天蓋の重さは圧し候。遠きより、庭は全きに見え候へども、近くにて、各の枝と葉とは込み荷を負ひ、あひだの場所は育ちにて塞がれ候。停まりの中に保たれたる場所にて、豊かさは茂りすぎへ凝り、恵みはもはや、これを待つ手へ届かず候。
今日、貴殿、落ちたる橄欖を集め、鉢にて洗ひ、苦くとも乾かすために出すも候。缶に残るものにて靴あるいは外套に油を引き、土地の香りを周りに立たせるも候。窓を開き、湿りたる空気を厨に通させ、塩水の乾きて跡を残したる床を掃くも候。剪定の刀を研ぐことに幾分を費やし、庭の再び正しきに据ゑらるる刻のために備へるも候。
今日の色は灰黄緑に御座候。
Lucky Color: OliveDrab — #6B8E23茂りすぎを手入れし、残りの収穫を取り戻し候。