正位の牌にて、女帝の庭は熟るる果実にて輝き、小麦は石の道の縁に重く曲がり、蜂の花を梳く淡き音が御座候。されど牌を半ば回したる逆位にて、野は女帝の手より滑り候。茎は乾くに任され、果樹園の林檎は地の上に傷つき候。かつて麺麭と甘き砂糖煮とにて満ちたる柳の籠は、傷ある卓の上に空にて坐し候。収穫は風に集められ、鴉に散らされ候。
昔、安那托利亜の羊飼ひは川岸に沿ひて羊を見、土の竈の近くの涼しき塵に靴を踏み候き。竈そのものは、丸屋根にて粗く、水の縁を内張りしたる沖積の粘土より建てられ、今は忘れられたる手にて形づくられ候き。ある春、玉蜀黍の失敗したる後、家族はこれらの竈の褪せる温みへ掌を押し、大麦の最後のひとつかみより、もう一枚の麺麭を望み候き。荷を負ひたる約の時に候き。庇ひは近く感じられ候へども、慰めには御座なく候き。厨にて、娘は扁豆の袋と古き根菜とを引き出し、馬鈴薯の皮は皺みて柔らかく、去年の秋の李の瓶は、ほのかに雨の味のする砂糖煮へ濃くなり候き。饗宴は御座なく候き。あり得しものの記憶のみに候き。
これらの村の縁にて、野生の薔薇は広がり候き。茎は捨てられたる垣を縫ひて絡み、地に半ば埋められたる鉄の道具の周りに自らを巻き候き。各の春、花弁は耕されぬ庭の上へ落ち、落ちたる葉のあひだに定まり候き。野の休眠するときすら、これらの褪せたる花は、より良き天気の記憶に縋り候き。近く、商ひの女の前掛は冷き炉の傍らの釘にかかり、粉にて染み、日と年とにて印され候き。より静けき時ならば、これを着けて市よりの贈物、酪の楔、乾きたる無花果のひとつかみを運ぶところに候き。されど今は待ち、決して来ぬ仕事のためなるが如くに候き。
北の町にて、古き土壁の家は地平を錨とし、壁は藁と泥と羊の毛との混じりより建てられ候。重き雨のあひだ、かつて笑ひを庇ひし屋根は荷に感じられ、重さが圧し、煙と涼しさとを内に閉じ込め候。手入れを離れたる果樹園は、石の井戸の上に影を投げ、嵐の後の地の香りは、古き悔ひの如く残り候。窓の縁にて、打ちたる粘土の杯は、食はれざりし麺麭の皮の傍らに忘れられて坐し候。
されど、ここにも動きは御座候。庭に跪くある者は、落ちたる薔薇の実を茶のために集め、黄昏の落ちるとき遅く煮候。麺麭の生地は形づくられ、かつて冷えたる同じ炉の傍らに膨らむに任され、香りは静けき室を通じて運ばれ候。丁寧に書かれたる文は、隣を訪ねるために出づる前、袂の前掛へ滑り込まるることも候。錆び候へども頑丈なる鉄の庭の叉は、再び上げられ、土を返すことも候。道に沿ひたる百里香と浅葱とのためにのみにても候。
今日の色は薔薇茶に御座候。
Lucky Color: RosyBrown — #BC8F8F春の約は静かにて、なほ耐え候。